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素晴らしい出来ばえの、オムニバス風群像サスペンス・ホラーの傑作、「奇談」。

真珠湾攻撃による動揺が広がる1942年の朝鮮京城(ソウル)。安生病院には、無数の刺し傷のある日本軍人、氷に閉ざされた美少女、交通事故で死んだ母親と無傷の娘、が相次いで運び込まれてくる。病院の若き医師三人は、彼らと不思議な縁を結んでいくことになる…大きくは三つのエピソードからなるオムニバス風なのですが…

第一のエピソードでは、若き医学生に、「卑劣な街」「アイスケ-キ」「愛なんていらない」で印象的な若者を演じた注目の若手チング、氷に閉ざされて死んだ美少女に、恐らくモデルと思われる映画デビューの美形ヨジ、第二のエピソードでは、若手医師に、映画ではベテラン最近『復活』で日本にもファンが増えた演技派イ・ドンギュ、無傷の少女に、「青燕」「九尾狐(クミホ)家族」『雪の女王』の美少女子役コ・ジュヨン、母親に、キドク作品常連パク・チア、母親の再婚相手に、『エアシティ』悪役外人David McInnis、第三のエピソードでは、美貌の女医に、まもなく衛星劇場で放映される「夏が過ぎゆく前に」とか映画ではベテランのキム・ボギョン、その夫の脳外科医に、ホン・サンス作品とか神経質な役を演らせたら天下一品キム・テウ、看護婦には、『ごめん、愛してる』でイム・スジョンの生意気な妹を演じたチョン・ジアン。

もともと「マグノリア」「ショートカッツ」「私の人生で最も美しい一週間」とか、群像劇はベラボーに好きなんですが、全く予備知識なく見た本作がそんな匂いを持ったサスペンス・ホラーだったので、驚くと共に大満足です。個々のエピソードは、第一エピソードが未だかつて見たことのない斬新なプロットを持つものの、第二、第三はそれほど目新しくなかったりしますが、それらが、巧みにクロスオーバーし、さらには、学生運動に揺れる1971年につながっていくというシナリオは実によく計算されていて絶品です。役者も、韓流的な華やかさとは無縁ながら、実力派若手が集まり、美少女子役コ・ジュヨン初の恐怖演技とかも実に生々しかったりしますし、さらには、板張りの霊安室、タイル張りの手術室とかノスタルジックでおどろおどろしい病院の造型も雰囲気たっぷりで、この素晴らしいシナリオを活き活きと支えています。

以下多少【ネタバレ】ですが、勿論、安易な貞子風幽霊も何度か出て驚かされるのですが、実は、いわゆる超常現象で死ぬ人物が殆どいなかったり、どのエピソードにも悲しい人間の愛や別れが濃密に織り込まれてたり、出だしから様々な伏線に満ちていたりするのも、このシナリオの実に巧い所だと思います。この手のサスペンス・ホラーでは「箪笥」がダントツだと思ってましたが、新人兄弟監督と若手俳優の才能ががっちり噛み合ったこの作品は、充分に肩を並べる傑作だと思います。「箪笥」が好きな方には、絶対お薦めです。