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花の美男子による糞尿版「トレイン・スポッティング」とでも呼ぶべきシュール・ロードムービー、「トイレ、どこですか?」

「メイド・イン・ホンコン」「美しい夜、残酷な朝(dumplings)」フルーツ・チャン監督の手による、香港・韓国合作ロードムービー異色作なんですが、イケメン大集合なのに、特に女性ブロガーにはボロクソの珍品。まもなく世紀が変わろうとする2000年。北京。トイレで産み落とされた「便所神」と呼ばれる青年は、拾い育ててくれた祖母が天壇公園で倒れて意識不明に、また、友達の金髪青年は、13歳の弟が胃ガンと診断される。釜山。足の悪い金髪青年は、突然海からやってきた「海の生物」と自称する美少女に惚れるが、彼女は骨がない奇病に、また、友人のイケメンは、自分が遺伝病のため40歳まで生きられないと宣告される。彼らは、愛する者のため、奇跡の薬を求めて、東奔西走する。「便所神」青年は、釜山からニューヨークへ、「金髪北京」青年は、インドへ、「遺伝病」青年もまた…

「便所神」青年には、全編流暢な中国語をあやつる「花より男子」阿部力、「金髪北京」青年には、マ・チェ、「金髪釜山」青年には、『ありがとうございます』で再び人気沸騰中「僕の彼女を紹介します」チャン・ヒョク、「遺伝病」青年には、『バリでの出来事』最近「卑劣な街」で名演を見せるチョ・インソン、ニューヨークの殺し屋青年には、「メイド・イン・ホンコン」「ピンポン」などで日本でも知られる香港イケメンのサム・リー(クレジットは、イ・チャンサム)。

出だしは北京で、私も万里の長城で見ましたが、思い切り粗末で汚い、床に穴が複数開いているだけの公衆トイレを舞台に、若者やその家族の奇妙な物語が展開するのには、かなり衝撃を受けましたし、さらに、汚水溝をカメラが通り抜けていくと釜山に浮上して、岩場にポツンと置かれた移動式トイレを舞台にした、風変わりな少女と青年二人の物語になる、という展開に唖然としたのも事実です。しかしながら、見終えた後に奇妙な共感みたいなものが残るのは、人間と切っては切れない排泄という行為を軸にすえ、愛しながらも死の病に瀕する、祖母、弟、恋人、母、自分、を助けるべく東奔西走する今風若者たちの不思議な一生懸命さが、エキゾチックな外国風景の中での手持ちカメラによる粗いドキュメンタリー風映像と、ファンタジックなシナリオを通じて伝わって来るからでしょう。

確かに多くのブロガーが書いてる通り、不潔なトイレは勿論、カンジス川べりの葬礼や立ち小便の様子などなど、清潔好きの方には目を覆わんばかりのシーンが多いのは事実ですが、排泄や不治の病や死を通して、その先に見えるものを探ろうとする姿勢に、ある種の感動を感じるのもまた事実です。敢えて、ロードムービーの秀作と呼びたいと思います。但し、決してお薦めしませんので、ご覧になる時は、十分に心の準備を。チャン・ヒョク、チョ・インソンの名に釣られて、軽い気持ちで見ると痛い目に合うと思います。