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子役イ・ラへつながりで、「ハーブ」。

「恋する神父」でデビューしたホ・インム監督が次に選んだテーマは知的障害と難病。その取り合わせが、いかにも、って感じなので、いくら好きなカン・ヘジョン主演とは云え、長らく見るのを躊躇っていた一本です。そんな時、2006/12/27付け朝鮮日報の記事で、「この映画でわたしが精神遅滞の人々を利用するのではないかという罪悪感に苦しんだ。」とのカン・ヘジョンの言葉を読んで、そう言う彼女の演技が見たくて意を決したのですが…七歳で知的成長の止まった二十歳のサンウンは、花屋を営む母親と明るく暮らしていた。そんなある日、着ぐるみを着た交通警官と出会い一目惚れ。警官の方も、彼女を国際弁護士と勘違いして、二人は付き合い始めるが…

主人公サンウンに、カン・ヘジョン、母親に、ペ・ジョンオク、交通警官に、『ごめん、愛してる』で日本でも良く知られるチョン・ギョンホ、警官の上司に、イ・ウォンジョン、七歳の親友に、『12月の熱帯夜』でオム・ジョンファの娘を演じた子役イ・ヨンユ、医師に、チェ・ジョンニュル、サンウンの少女時代を、「浮気するのにいい日」子役イ・ラへが演ってます。

正直、脚本や演出には見るべき所がない、というのが本音です。強いて云えば、「とかげ」に比べストーリーが素直であり、地方都市(多分、チュンチョン(春川))の雰囲気が心地よい、って所くらいでしょう。それでも、何度も涙が流れ落ちるのは、カン・ヘジョンとペ・ジョンオクの演技の賜物としか言いようがありません。カン・ヘジョンは役柄に罪悪感を持ったというだけあって、慎重に真摯に、それでいて、時には弾けるように、主人公サンウンを演じていますし、『心震わせて』の名演が忘れられないペ・ジョンオクも、カン・ヘジョンに周波数を合わすかのように軽重自在に母親を演じています。これだけの演技が見られるのであれば、映画としての体をなしていなくとも、意味ある時間が過ごせたと感じます。さらに意外な拾い物は、七歳の親友を演じたイ・ヨンユ。大人ぶった生意気な少女を活き活きと演じていて、大器の片鱗を感じさせます。

カン・ヘジョンの罪悪感に対して、「精神遅滞の人々にとってあなたが意味ある存在になればいい」とのペ・ジョンオクの言葉が出演に踏み切らせたとのことですが、少なくとも二人の熱演は、その思いを十分伝えているだろうと思います。映画としてお薦めする気にはなりませんが、二人の演技を見逃すのは惜しい、と思える一本です。