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ペ・ジャンスつながりで、「愛するときに話すこと」。

「八月のクリスマス」の匂いを色濃く漂わせる、大人の哀しい「二度目の恋」を描く秀作。或る冬の日。母親と知的障害を抱えた兄と暮らす薬剤師の所に、兄が原因で結婚出来なかったかつての恋人が、結婚を報告に来る。二人はモーテルに入るが、薬剤師は何も出来ない。父親が作った6億の借金を抱え模倣ブランドをトンデムン(東大門)市場で売るデザイナーは、妹の「妊娠したので結婚したい」という話を聞いて激怒する。行き場のない怒りと悲しみを抱えた二人は、ふとビールを交わすこととなり、そのままモーテルで一時を過ごす…

薬剤師には、ハン・ソッキュ、模倣デザイナーには、シム・ウナと同い年で何処か面影が重なるキム・ジス、薬剤師の兄に、ハン・ソッキュとは「八月のクリスマス」以来久しぶりの共演で名演イ・ハヌィ、母親に、『ホジュン (許浚)』とかTVではお馴染みのチョン・ヘソン。ペ・ジャンスは、ハン・ソッキュが一日に二回訪れたモーテルの主人役。

大人の男女の重く切ない人生が交わり合う描写は、ハン・ソッキュとキム・ジスの驚くほど自然な演技もあって、静かに胸に響いてきます。薬剤師が、障害者の兄も金を稼ぐんだ、駐車代はタダだし、携帯通話料は半額だ…と酔って話すシーンとか、デザイナーが自分たちを密告した別の店の女主人に殴りかかるシーンとか、二人の抱えているものの重さがよく伝わってきますし、「八月のクリスマス」を思い起こさせる、薬局のカウンターを挟んでの口数の少ない会話シーンは、穏やかな躊躇や諦めみたいなものがよく出てたりします。

映画が始まる時と、終わる時で、彼らが抱えているものの重さが変わったというわけでなく、今までもこれからも同じように時が流れていく、といったシナリオの流れは、ある意味、物足りなく感じたりもしますが、小学校の思い出や、登山、といった小さな変化と希望が心地好く同時に切ない余韻として残る名編だと思います。

余談ですが、ハン・ソッキュとキム・ジスがドライブイン・シアターで見る映画は「国境の南側」で、チャ・スンウォンが”北”でのチョ・イジンとの楽しい日々を回想するシーンです。さらに余談ですが、兄が好きな音楽として”滑走路”というグループのちょっと土俗的なフォーク・ロックが流れるので、ネットで他の曲も試聴してみましたが、イ・ハヌィや私のような世代に懐かしい匂いがあって結構お気に入りです。もっと余談ですが、映画に出てくるちょっとノスタルジックなスユ(水踰)小学校は江北区に実在しますが、どうもカム・ウソンの出身校らしかったりします。