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キム・イングォンつながりで、「アナーキスト」。

監督は本作がデビューのユ・ヨンシクですが、プロデューサーに「王の男」監督イ・ジュニク、脚本に復讐三部作監督パク・チャヌクの名前が見えるだけあって、対日抗争が舞台ではありながら、哀しく残酷な秀作エンターテインメントに仕上がっています。1924年上海、抗日武装団体である義烈団に属する五人のテロリスト達。拷問の後遺症に苦しむ拳銃使いは、組織の金を麻薬に流用、処刑の代わりに、単身日本領事館襲撃を敢行するが、直後何者かに狙撃される…そして、残った四人も義烈団を離脱し…

五人のテロリストには、拷問の後遺症を阿片で紛らわせる二枚目の拳銃使いに、チャン・ドンゴン、王族の血を引く棒術使いに、「マイ・ボス・マイ・ヒーロー」「家門」シリーズのチョン・ジュノ、やがて肺病を患う参謀に、同じく「マイ・ボス・マイ・ヒーロー」シリーズのキム・サンジュン、熱血で下品なナイフ使いに、今やドル箱スターのイ・ボムス、この映画の語り手で公開処刑直前に救い出される新入りに、「花嫁はギャングスター」「恋する神父」キム・イングォン。混血の歌姫に、「オールド・ミス・ダイアリー」イェ・ジウォン、義烈団幹部に、『冬ソナ』チョン・ウォンジュン。

ダイナミックに再現された西洋と東洋が渾然とする上海租界を舞台に、個性豊かでビジュアルな俳優が好演することで、大義、内通、不信、裏切、欲望の渦に巻き込まれるテロリスト達を、鮮烈に、時にはユーモラスに描いたアクション・ノワールと云えるでしょう。明日がないから仕事の前には正装して記念写真を撮るという伊達なテロリスト達は、次々と悲惨な死を遂げていきながらも、ある種の輝きの中に描かれています。

この映画には当時実在した臨時政府アン・チャンホ(安昌浩)とかキム・グ(金九)とかが登場し、歴史を知る方が見るとまた全然違う見え方がするでしょうし、今の時代テロリストの侠気を云々することが許されるとも思えませんが、重く残酷ではありながらスタイリッシュなエンターテインメントに仕上がっていると云うのが正直な感想です。

それにしても、イ・スンマン(李承晩)大統領暗殺を暗示するラストは、日本人である私には到底窺い知れない重さを持っているのでしょうか…