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ウ・ヒョンつながりで、しばらく名優イ・ムンシク出演作を続けますが、まずは、「フライ・ダディ」。

メタボリック中年オヤジに贈る応援歌として素晴らしいシナリオ、と思えば、直木賞受賞の名作「GO」金城一紀の未読ですが「フライ,ダディ,フライ」が原作で、確かに何処かで嗅いだことのある香りの筈です。日本では2005年に、岡田准一、堤真一で映画化されてます。体脂肪率32%47歳営業部長昇進間近の平凡なサラリーマン親父に、ある日、高校生の娘がカラオケ喫茶で殴られるという事件が。悪いことに、相手は高校ボクシング花形チャンプで、学校ぐるみで彼を庇う前で親父は逆に脅される始末。そんな父親を見た娘に顔も見たくないと云われ、親父は何も出来ない自分に嫌気がさし包丁を持って学校に乗り込むが、そこで奇妙な三人組と出会う。三人組は話を聞き、鍛えてボクシングで敵討ちをしろと、親父を焚きつける。それから、激しい訓練の日々が続くが…

親父に、この役の為に15Kg体重を増減させたというイ・ムンシク、趙廷来(チョ・ジョンレ)の大河小説「アリラン」とか本を手放さないニヒルな喧嘩の達人高校生に、「王の男」で絶賛されたイ・ジュンギ、二人の仲間に、ナム・ヒョンジュンとキム・ジフン、妻に、『悲しき恋歌』で見知ってる人も多い美形イ・ヨンス、娘に、美少女キム・ソウン、悪役教師に、「多細胞少女」イ・ジェヨン、親父を応援する屋台のおやじに、特別出演ウ・ヒョン。

味のある脇役出身だけに、ほぼ等身大と云っていいイ・ムンシクがとことん笑って泣かせてくれます。平和な家庭に突然降ってきた事件に、取り乱し、自虐の念にかられ、そして一念発起し…といった悲喜こもごもの父親像を、例によってケレンミたっぷりに演じていて絶品です。イ・ジュンギも、「GO」の「杉原」を思い起こさせるカッコ良さに、暗い陰を感じさせる役どころはうってつけ。イ・ジュンギがパンマルでイ・ムンシクを怒鳴るなんてシーンは、二人の間の独特の空気を感じさせ、この二人を父息子にして「GO」を撮って貰いたいって願ったりします。

ソウルタワーへロープウェイを使わず登らせたり、ヨイド63ビルを駆け上がらせたりと、いささかお伽話風味が強かったり、結末もまあ想像通りだったりしますが、切実で痛快な中年オヤジ応援歌としてお薦めです。

ちなみに、「もう呼ばれなくなって久しい」という親父の「チャンガ」というあだ名は、イ・ムンシクの世代に流行ったロボット漫画の地球を守る正義の味方キャラの名前だそうで、この映画は、そのあだ名を取り戻すための戦いの記録と理解出来るでしょう。