イ・ボムスつながりで、700万人に迫る大ヒット、「美女はつらいよ」。
「白鳥麗子でございます」鈴木由美子のコミック「カンナさん大成功です!」を原作にし、「JSA」「シュリ」をも抜いてしまった大ヒット全身整形コメディ。90Kgを超える巨漢ながら美声を活かしてゴースト・シンガーやテレクラ嬢で暮らすハンナは、ある日恋心を抱くプロデューサーの心ない言葉に一旦は死を決意するが、死の代わりに選んだのは全身整形。目も眩むような美女ジェニーに生まれ変わった彼女は、再びプロデューサーに近づくが…
主演ハンナ/ジェニーには、「クァンシクの弟クァンテ」でポン・テギュを手玉に取った美声美形キム・アジュン、イケメンPDに、チュ・ジンモ、レコード会社社長に、『パリの恋人』チャグナボジのソン・ドンイル、認知症気味の父親に、『チャングム』イム・ヒョンシク、テレクラ好きの整形外科医に、イ・ハンウィ、ストーカーに、「殺人の追憶」パク・ノシク、特別出演では、交通事故のタクシー運転手に、一分を超える絶妙の話芸を見せてくれるイ・ボムス、交通警官に、リュ・スンス、冒頭の占い師に、笑えるイ・ウォンジョン。
一番驚くべき点は、暴力もシモネタも殆ど使わず、ここまで笑って泣かせるところでしょう。ロマンス、恋敵、成功、友情、親子愛…ともかく面白い映画の要素が全部詰まっていると云って過言ではない脚本の巧さには舌を巻きます。さらに役者が絶品。特に、「愛しのローズマリー」で使われた巨漢メイクでも目だけやたら可愛かったりするキム・アジュンですが、スタイル抜群、歌は上手い、そして何より「容姿同一障害」とでも呼ぶべき心と体のアンバランスから来る可笑し切ない演技はこの映画の最大の魅力になっています。しかも周りを芸達者がズラリと取り囲んでいて、彼女をもり立てるように出しゃばらないながら、ちゃんと個性的な色が出てるあたりも心憎いです。
勿論容姿がテーマなので、容姿至上主義みたいな風潮をチクチク刺激する毒気をはらみながらも、あまたの名作やくざコメディを押し退け韓国コメディ映画の頂点に立っただけのことはある傑作と云えるでしょう。
そうそう、音楽も忘れてはなりません。実際チャートでトップに立ったキム・アジュン「マリア」を始め、Loveholic、Clazzquaiも参加する音楽は抜群のセンスで、オリジナル・サウンド・トラックは全編ボーカルという贅沢な作りで映画の持つ洒落た雰囲気を再現する名盤になっていて、こちらもお薦めです。