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チョン・ムソンつながりで、「シルバー・スタリオン」 。

朝鮮戦争のさなか、まだ戦禍の及ばぬ江原道テベク(太白)山脈麓のひなびた農村クムサン(錦山)にも共産ゲリラを追う米軍がやってくる。その夜、少年マンシクの母親は米兵に強姦され、そのことが元で村八分に。まもなく、けばけばしい化粧の女たちが村に家を買いに来るが、近くに米軍がキャンプを作るので娼家を開くためだとか。古い村人たちは追い返すが、やがて米軍が来て、川の対岸に「テキサス・タウン」という夜の歓楽街がオープンする…

寡婦マンシクの母親に、最近はTVに出ずっぱりまだ20代の若いイ・ヘスク、娼婦には、「犬のような日の午後」キム・ボヨンと「千年愛」パン・ウニ、村の長老には、「ホワイト・バレンタイン」書店主チョン・ムソン、その息子には、『クッキ』とか若いソン・チャンミン、村人の中には、やはり『クッキ』のキム・ヒョンジャや「淫乱書生」イ・ギヨンの顔も見えます。

原題は、むかし蒙古が攻めて来たとき銀馬にまたがる将軍が天から舞い降りてきて追い払った、という伝説からで、戦争がもたらす米兵や娼婦によって村が蹂躙されていくのに今回は誰も助けに来てくれない、という皮肉を表しているのですが、娼婦に身を落とすイ・ヘスクとその息子を軸に、したたかに生きる娼婦たち、米軍のゴミ捨て場を巡って争う少年たち、古い因習に囚われ残酷な村人たち、といった登場人物それぞれを冷徹な目線で描くことで、悲しい緊張感にあふれた作品に仕上がっています。

物語は、1950年9月15日マッカーサー仁川上陸、10月中国軍参戦、12月中朝による平壌奪回という秋から冬へのわずか3カ月ほどを描いているのですが、このあっという間にある農村に起きた激しい変化は、全く戦闘シーンを使わないにも関わらず、戦争がもたらすものをはっきりと伝えているようで秀逸です。