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キム・ウォンシクつながりで、「天下壮士マドンナ」 。

性同一障害と朝鮮相撲、このあり得ない組み合わせで作り上げられた、人間ドラマの秀作。よくコメディにジャンルされているようですが、確かにコミカルな要素もかなり優れていますが、コメディの範疇に押し込めるのは、この作品に対して勿体ない、ってのが正直な感想。高校生ドングは、オカマと蔑まれながらも、マドンナに憧れ、手術代のためのバイトに精を出す毎日。ある日、酒乱の父親が社長を殴り、せっかく貯めたお金が示談金に消える。失意の彼は、500万ウォンが賞金であるインチョン(仁川)市長杯相撲大会のポスターに惹かれ、相撲部に入るが…

主演には、この役のために27Kg体重を増やした「マイ・リトル・ブライド」「トンマッコル」リュ・ドクファン、仙人のような相撲部監督に、「地球を守れ」ペク・ユンシク、酒乱の父に、「美しき野獣」とか名演キム・ユンソク、家出してロッテワールドでハイジ衣装の案内係をする母に、「キルソドム」の絶世の美少女イ・サンア、殴られた社長に、チェ・ジョンウ、弟に、キム・ウォンシク、そして、憧れの日本語先生に、草彅剛。

確かに、ギャグの基本である繰り返しを忠実に守る笑いのセンスは抜群で、まるで間欠泉のように繰り返される、トイレにこもる監督、背中に貼られたイタズラ書き、すぐに股間を硬くする先輩、絶えずしたい事が変わる友人、とかとかどこかシュールな匂いの笑いが全編に散りばめられていて、しかも難しいテーマなのに人を見下すような傲慢さが殆ど感じられない、素晴らしく質の高い笑いだと云えます。しかし映画としては、性同一障害の息子に向き合わなければならない両親の登場するシーンの質がベラボーに高く、アマボクサーとしての過去にこだわる酒乱の父親がトランスジェンダーであることよりも相撲を始めたことで怒るシーンとか、息子に理解を示す母親とのチゲのシーンとか、実に優れたドラマになってたりします。

勿論映画自体素晴らしいのですが、それより、驚くほど体重を増やし、女性的仕種や相撲の訓練をし、さらにマドンナの振りフルコーラスを会得したリュ・ドクファンの熱演には頭が下がります。何とは云いませんが、ラストシーンを見て涙が滲まない人はそう多くないと思います。お薦めです。