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シン・ヒョンジュンつながりで、何故か最近になってDVDが出た、「愛と悲しみのマリア」。

叙情的でありながら、一方でものすごく残酷な、人間ドラマの佳編。夏は男女の嬌声があふれ、冬は雪に閉じ込められる、ある兄弟が営む海の家。まだ客のいない春に、行き場を失った母娘が住み着く。やがて母は兄と結婚するが…

幼い頃の両親の出来事にトラウマを持つ弟に、シン・ヒョンジュン、幼い頃の頭の怪我で障害を持つ兄に、主にドラマで活躍してきた「マイ・ボス・マイ・ヒーロー1&2」キム・サンジュン、男に捨てられアルコール漬けの母に、『宮』の恵政宮「国境の南側」とかここ数年第二の全盛期を迎えているようなシム・ヘジン、世の中の暗部しか見て来なかった娘マリアに、7歳ソ・ジヒ、宿に流れて着く女好きの山師に、名優イ・ギョンヨン、18歳になったマリアに、『美しき日々』で知る人も多い歌手でもあるイ・ジョンヒョン、その男に、特別出演「将軍の息子」パク・サンミン。

この映画、中盤までとイ・ギョンヨンが登場する以降の終盤で、監督が変わったかのように色合いを変えます。中盤までは、宿泊客の激しい情交シーンや兄弟母娘の辛い過去を交えながらも、四人の危うくそれでいてどこかほのぼのとした関係を叙情豊かに描いていて、それはそれでかなりの出来ばえです。ところが、イ・ギョンヨンの登場をある意味合図にしたかのように歯車が狂い始める終盤は、驚くほど残酷で皮肉に満ちた展開を見せていきます。個人的には中盤までの方が好みですが、終盤は前半が巧く活きてたりするので、監督の描きたかったのはこっちの方だったのかもしれません。

映画自体は前半、後半で全く好き嫌いが分かれるような気はしますが、シム・ヘジンが自堕落、妖艶、下品な中にも時折柔らかく優しい魅力をかいま見せることもあって、個人的には十分満足な一本です。

余談ですが、ソニョンさんに教えて頂きましたが、原題の「ヨインスク」は旅人宿と女人宿の同音異義語で、後者には売春宿の意味があることを知って見ると、なるほどと納得する所が出てきます。

尚、犬好きの方が見ると卒倒するようなシーンがあるので、ご注意下さい。