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味わい深い演技をみせるソン・ジェホつながりで、「国境の南側」。

38度線に隔てられた「ロミオとジュリエット」、って面持ちの切ない恋人・家族の物語。ピョンヤン(平壌)の芸術団オーケストラに属するホルン奏者の青年には、意を決して結婚を申し込んだ美しい恋人がいた。しかし死んだと聞かされてきた祖父が韓国で生きていることを知り、彼女に必ず迎えを送ると言い残して、家族で脱北。しかし苦労の末韓国に辿り着いた時には、祖父は他界しており親族も冷たく、苦労の連続の生活が待っていた。それでも必死で許嫁を呼ぶ費用を稼ごうとする青年に、ある時彼女が結婚したという噂が…失意の青年は、やがて心優しい食堂の女性と結婚、北朝鮮料理の店も軌道に乗りかけた時、あの許嫁が脱北して来る…

ホルン吹きの青年には、適役チャ・スンウォン、悲しい許嫁には、「台風太陽」で好演キュートなチョ・イジン、暖かそうな青年の妻には、気品を感じさせる名女優で『宮』恵政宮シム・ヘジン、父親に、「その時、その人々」で朴大統領を好演ソン・ジェホ、母親に、「ディナーの後に」カン・スヨンの母役ウォン・ミウォン、姉に、美声も聞かせてくれる『キム・サムスン』姉イ・アヒョン、その夫に、「王の男」で助演男優賞ユ・ヘジン。

ともかく良い意味でも悪い意味でもチャ・スンウォンの映画です。筋目正しく気の小さい北朝鮮青年が、必ずしも望まぬ脱北を境に人生の皮肉に弄ばれる様を、切なく、時には滑稽に好演していて、あの長身、太い眉、大きな目の人の良さそうな愛嬌がなければ、つまらないメロ映画になっていたと思います。逆に云うと、周りに配している素晴らしい俳優を活かせていない演出が酷いということで、シム・ヘジン、ソン・ジェホ、ユ・ヘジンみたいな味のある俳優をもっと巧く使っていたら大傑作になっていた筈です。また、ピョンヤンの町並み、劇場、遊園地などをダイナミックに再現している所が素晴らしかったりするのに、その映像を後で安易にフラッシュバックする演出には全く芸がなかったりと、とにかくものすごく惜しい映画です。

映画としては歯がゆい所ばかりなのでお薦め出来ないながら、ちょっと癖があるので好き嫌いが分かれる俳優ではありますが、チャ・スンウォンが好きなら、まず見逃すのは惜しい映画だとは云えるでしょう。