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イ・スンホつながりで、「青燕」。

1933年8月7日初の女性単独日韓飛行途上、今の熱海市玄ケ獄山中に墜落し亡くなった朝鮮出身の女性飛行士パク・ギョンウォン(朴敬元)の生涯を描く秀作。テグ(大邱)の貧しい農家に生まれた彼女は、苦学して立川飛行学校に入学、優秀な指導官、心優しい朝鮮人気象士官の恋人、可愛い同胞の後輩にも恵まれ、どんどん腕を上げていく。しかし、近づく大戦争の足音が彼らを悲劇の渦中へ引きずり込む中、運命の日、愛機「青燕」に乗り込み西の空へと飛び立つ・・・

パク・チョンウォンには、チャン・ジニョン、恋人の気象士官に、キム・ジュヒョク、彼女を助ける日本人女性飛行士に、韓国映画は初出演『オールイン』ユミン(笛木優子)、優秀な指導教官に、仲村トオル、美形の後輩に、同じく『オールイン』でソン・ヘギョの少女時代を演ったハン・ジミン、ひょうきんな後輩に、キム・テヒョン、外務大臣に、中原丈雄、キム・ジュヒョクの父親にイ・スンホ。映画の冒頭とエピローグで空を飛ぶことを夢見る少女時代を演じるのは、「浪漫刺客」「九尾狐家族」名演の美少女コ・ジュヨン。

前半は、熱中した数少ないNHK連続テレビ小説の一本「雲のじゅうたん」を思い出す若々しく溌剌とした女性飛行士の誕生と活躍を、実写と出しゃばらないCGを巧く使った迫力満点の飛行大会や柔らかなロマンスや友情などを通じて描いていき、後半は、激化する大陸進出や独立運動といった悲劇的な歴史状況に翻弄される人々を激しい描写も交えて描いていて、役者たちの素晴らしい熱演と相まって、深い感銘を与える作品に仕上がっています。

しかしながら世のこの映画への評価は、韓国では、「親日」映画として「見ない運動」が起こったり、逆に日本では、東京国際映画祭で上映されたもののネットでは「反日」映画として酷評が多い、という辛い状況にあるようです。2005年12月29日付朝鮮日報のレビューは、この映画を称賛した上で、主人公を「親日派」として見る(≒非難する)観客にも、「時代の犠牲者」(≒日本の犠牲者)として見る観客にも「監督は満足感を与えない。」と指摘した上で、「是非そうした両分されたイデオロギーの呪縛から脱することを切望」したいと書いているのですが、残酷で不幸な時代にあって、空に憧れ果敢に挑戦した歴史上の先達への畏敬の念に満ちたこの映画に対する実に冷静なレビューだと云えます。

「シルミド」や「力道山」が優れた映画であったように、「事実と虚構が混在している。」としても、この作品も同様に優れた映画であると、個人的には思います。この映画のDVDを発売するだけの度量に期待したいと思います。