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もう一本、チョン・ウンピョつながりで、「DMZ 非武装地帯」。

70年代末期、北のトンネル攻勢が激しいDMZ(非武装地帯)を舞台に、捜索隊に配属された新兵の目を通して南北分断の悲劇を描く秀作。大学で映画を専攻する青年が前線に配属され、そこで奇妙な先輩達に出会う。同じ頃、北のゲリラが38度線を超えて侵入してくるが・・・

映画専攻の新兵には、後に『宮』ユル皇子役で人気沸騰のキム・ジョンフン、警戒所を南国のホテルに偽装しヘビ酒を密売する磊落な兵長に、「ダンサーの純情」で華麗なダンスを見せるパク・コニョン、その部下でとぼけた上兵にチョン・ウンピョ、幼い娘を故郷に残し南に侵入してくる北の将校に、チョン・チェギョン。タバンのホステスに、「ナチュラル・シティ」イ・ジェウン、暴力狂の小隊長に、イ・デヨン、中隊長には、『オールイン』チェ・ジュニョンの顔も見えます。

映画の全体としては、前半は、激しい訓練の合間のエロ映画の上映会、セクシーな洋楽を使った国境を挟んでの音楽攻撃、ヤシの木を植え「ホテル・ココナッツ」と名付けられた警戒所、米軍へのヘビ酒の密売、といったどちらかと云えばコミカルな演出を多用し、パク大統領暗殺を境にした中盤以降は、激化する北のゲリラ攻撃の中で起きる南北兵士の悲劇を描く、といった流れになっているのですが、この映画の優れた所は、イ・ギュヒョン監督の体験がベースになっているだけあって、国家とかイデオロギーとは別次元の、スケベさ滑稽さ、友情と信頼、遠く離れた家族への思い、数mしか離れずに銃を向け合う凄まじい恐怖感、敵と向かい合ったら自分の身を守るため相手の腹を撃てという残酷な教えとその実践、といった新兵の目線から見える最前線をヒリヒリする程生々しい皮膚感覚で描いている所だと思います。

個人的には、ちょっと過度に感動的で感傷的と思えるエピローグは好みではありませんが、私とは二つ三つしか違わない監督が描く、私がすでに新入社員になっていた頃とはとても思えない世界の描写は、見るものを捉えて離さない強靱なエネルギーを持っていると思います。機会があればお試し下さい。