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イ・デヨンつながりで、「爆烈野球団!」。

1905年11月17日第二次日韓協約、乙巳五賊、抗日運動・・・日本人にとっても重い時代を背景にしながらも、黎明期の野球を熱く描く、韓国スポーツ映画の最高傑作。

私塾の次男坊ながら野球にのめり込んでいく勉強嫌いの学士に、名優ソン・ガンホ、日本留学から帰ってきた豪腕投手じつは抗日運動家に、同じ監督の「クァンシクの弟クァンテ」でも名演のキム・ジュヒョク、美貌の帰国子女でやはり抗日運動家そして野球団監督に、珍しくお嬢様風キム・ヘス、ソン・ガンホの父に、「反則王」に引き続いて名優シン・グ、親日の父親に苦悩する捕手にファン・ジョンミン、元両班の三塁手に、キム・イルン、その元使用人の一塁手に、大好きなイ・デヨン。日本軍高官に伊武雅刀、その息子で日本チームキャプテンに、鈴木一真。そして、ラストで貫祿の特別出演に、チョ・スンウ・・・

漢城(今のソウル)に実在した皇城YMCA(基督教青年会)野球団を舞台に、初めて見る野球に取りつかれていく人々を、抗日運動や身分制度の崩壊、父息子の確執など重い課題を巧みに織り込みながらもユーモアたっぷりに描くシナリオは絶品で、スポーツ映画お約束、クライマックスの試合にそれらすべての要素を凝縮するというお手並みも文句無しですし、鶴や暗行御史(アメンオサ)の馬牌(マベ)なんていう小道具の使い方にも唸らされます。さらに、演じる役者も素晴らしく、特に、ソン・ガンホの言葉に頼らないユーモアの素晴らしさには、言葉も出ない感じです。ラストの彼の表情のアップは、翌年の「殺人の追憶」に並ぶ、名ラストシーンです。

個人的な感想ですが、近代日韓関係最悪の時期を描きながら、ユーモア溢れるスポーツの姿を借りて、新たな関係の可能性を探るかのような、知的で成熟した韓国映画人の視線を感じる、お薦めの一本です。