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気分を変えて、脇役キム・ヨンソンつながりで、「アイスケーキ」。

1969年全羅南道チャンソン(長城)を舞台に、少年のある夏休みを描く、ノスタルジック・ファミリー・ドラマの佳編。

それにしても主役二人の子役の巧さは、全く信じられない位です。今時の子供の筈なのに、全編全羅道の方言を操り、1本5円か10円のアイスキャンディ(アイスケーキ)や一個のゆで卵を渇望する様をリアルに演じ、巧いと感じさせる間もなく、見ている者を40年近く前の貧しい地方都市に引きずり込んでくれます。特に、少年達と五つか六つしか違わない私には、他人事と思えなくって、地面に落としたアイスキャンディは砂をはらって食べてましたからね・・・

母親と暮らし、死んだと聞かされてきた父親をソウルに探しに行くため電車賃840ウォンをアイスキャンディ売りで稼ごうとする少年に、「アンニョン、兄ちゃん(奇跡の夏)」の天才的演技が記憶に新しいパク・チビン、友人の浮浪少年に、「浮気な家族」で悲劇的な養子の少年を演じたチャン・ジュニョン、貧しい密輸化粧品売りのパク・チビン母親を生々しく魅力的に演じているのは、チャ・インピョの妻で長いタレント歴を持ちながらも映画初出演のシン・エラ。他にも、先生のクォン・ビョンギル、母の友人キム・ソニョン、遊び人ユン・ウォンソク、町のおかしなおばさんキム・ヨンソンとか地味な脇が、当時の貧しく荒々しく純朴な町の雰囲気を上手く作り上げています。

パク・チビンが父親を探そうとする、という物語の軸はあるんですが、貧しい少年たちだけでなく、密輸や連座制との関わりの中で必死に生きようとしている大人たちも、7月20日アポロ11号月面着陸のニュースやロケとセットを上手く使った懐かしい風景の中で、時には残酷に、そして生き生きと描いている所が、好感です。

ラストはちょっと甘チャンな所もあったりしますが、お薦めの一本です。