キム・ガプスつながりで、「トンケの蒼い空」。
慶尚南道(キョンサンナムド)の地方都市、密陽(ミリャン)を舞台にした、「トンケ(糞犬)」と呼ばれる青年の青春を描いた佳編。
母を亡くし喧嘩で高校を中退した「トンケ」、賄賂を貰ったこともある警察官の父親、スリの常習者でトンケの家に引き取られる娘、の三人を中心に、はみだし者の仲間たちや、高速道路開通に絡む地上げに群がるやくざが絡んで・・・とシナリオはなかなかの出来ばえですし、地方都市の風情も良く描かれています。
「トンケ」には「デイジー」チョン・ウソン、父親には素晴らしい熱演の「太白山脈」キム・ガプス、元スリ娘に「スカーレット・レター」オム・ジウォン。
キム・ガプスとオム・ジウォンの方言の強い演技も素晴らしく、シナリオや絵も凄く良いんですが、一番違和感があるのはチョン・ウソンですね。勿論熱演なんですが、あのイケメンの上に何度か出てくる肉体美から、鼻水を垂らし猫背気味で視線の定まらない「トンケ」役に、少し無理があったような・・・主題の一つであろう「何で生まれてきたんだ?」という太宰治風哲学命題にはマッチしてたりはするんですが、映画全体の画調に少しそぐわない感じがあります。でも一方で、チョン・ウソンが、ソル・ギョングやチェ・ミンシクとなる出発点になった映画、と語られる日が来て欲しい気もしたりします。
それはそれとしても、映画自体は、地方都市で、思うようにならないながら、必死で生きようとする人間群像が生々しく描かれた佳編だと思います。