「リトルガーデン」の福祉アロマ活動のひとつに「アロマ朗読会」

(こども対象の時は「お話アロマの会」)があります。

 アロマランプを焚いて、植物やアロマのお話をしたり、季節の話題を取り上げたりした後、絵本の朗読をします。懐かしい歌を参加者の皆さんと歌うこともあります。白磁のランプのオレンジ色の灯りがゆらゆらして、ほんのり芳い香りが漂って、実のところいちばん好きなお仕事です。

 

 母の暮らすグループホームでも、ほぼ毎月1回(こちらはボランティアで)「アロマ朗読会」をさせていただいています。こちらの施設に、このお話の会を毎回とても喜んでくださる女性の方がおられます。いつも真剣に聞いてくださり、大きく頷いたり、はらはらする場面では「ああ」と声を漏らしたり、読み終わった後は、「良かった。こういうのが、ほんと大好きなんじゃ。」と言ってくださいます。

 この日は絵本ではなくて、たまにはと、島崎藤村の「初恋」と石川啄木の「一握の砂」からいくつかの短歌を読んだのですが、終わった後、その方はいつものように、「私は、ほんとにこういうのを聞きたいんじゃ。」と、そして、「知恵を授けてほしいんじゃ」と言われました。

 そんな大そうな、と焦った私は、「いえいえ、お話を聞いて、どきどきしたり、うれしくなったり、悲しくなったり、いろいろ感じてもらうだけでいいんですよ。」とお返事したところ、「それを私は、知恵と言うてます。」と言われました。 「すぐ忘れるんよ。すまんねえ。でも、聞きたいんよ。」とも。

 実際、母を訪ねた時にご挨拶しても、素知らぬ顔をされていて、やっぱりそうかと思うことがありました。ご自分でも、それを自覚されている。けれども、心のうちにはまだ、「知りたい」「感じたい」「わかりたい」という強い気持ちを持ち続けておられるのです。人が人であることの根っこに触れたような気がしました。

 何が誰に響くのかなんてわからない。でも、香りと灯りと静かな声が、誰かに何かを届けることができるのなら幸せなことです。