『ボクサー』(1978年/東映東京)
監督:寺山修司
脚本:石森士郎、岸田理生、寺山修司
出演:菅原文太、清水健太郎、春川ますみ、伊佐山ひろ子、夏樹陽子、ファイティング原田、小沢昭一、唐十郎
かつての栄光も今は昔、落ちぶれた無口なボクシングトレーナーと、世界チャンピオンを夢見て上京して来た青年の交流....
社会からはみ出した2人が手を取り合って夢を追う。シナリオ学校の学生でも今どき恥ずかしくて書かないようなベタな設定です(笑)
不慮の事故で仲間を死なせてしまった老トレーナーに菅原文太、若いボクサーが清水健太郎。
この関係性が屈折していて、これはシナリオ学校の学生ではちょい無理?
菅原文太の弟と清水健太郎は、かつて同じビル解体工事の現場で働いていました。
その現場で、清水健太郎が操縦していたクレーン車の事故で文太の弟が死んでしまいます。
不慮の事故なのですが、文太の弟がその当時婚約していた女性に実は清水健太郎も思いを寄せていて、工事現場仲間の中では、あの事故はわざとやったんじゃ... というウワサが流れていました。
菅原文太は清水健太郎の真意を探る為に会いに行き、彼が沖縄から世界チャンピオンを目指して上京、ボクシングジムに通っている事を知ります。
そして清水健太郎も菅原文太が元東洋チャンピオンだった事を知ります。
そんな中で清水健太郎のプロデビュー戦、
足の不自由な彼は早々にKO負け。お前そんな身体じゃボクシングは無理だよ、とジムから放り出された健太郎は諦めきれずに文太を訪ね、ボクシングを教えてほしいと懇願。
「また人を殺したいのか」と拒否する文太も、必死に訴える健太郎についに心を許し、2人は二人三脚でトレーニングを開始。
そして東日本新人王決定戦にエントリー。
足の不自由な健太郎に過酷なスケジュールは無理だと止めようとする文太、予選を勝ち抜いてゆく健太郎。
そしてついに清水健太郎は、世界jr.フライ級タイトルマッチの前座試合として行われる東日本新人王・決勝戦のリングに立ちます....
寺山修司のボクシング好きは有名で、漫画『あしたのジョー』の力石徹の葬儀を実際に開催して葬儀委員長を務めたり。
この映画でも、菅原文太が清水健太郎に会う場所は「泪橋食堂」
わかる人にはわかる。
当時の現役世界チャンピオンだった具志堅用高さんや、ファイティング原田さん、輪島功一さんなど歴代の世界チャンピオンも特別出演しています。
公開された当時、ひと足先に『ロッキー』というボクシング映画が大ヒットしまして、ロッキーの柳の下のドジョウ狙いかいな? と思ったんですが、寺山作品独特の暗さと屈折があって、ハリウッドにこれは作れまい、という感じ。
ベタな展開が、意外に感動するんです。