従来型からリリース改善型アジャイルに変えるメリットのひとつは納期短縮である。しかし、何故それが可能なのかを理解している人は少ない。今回はこれを考察してみよう。

次の画面は簡単な社員管理システムを構成する。

ぶーぶーログイン画面
ぶーぶーユーザ登録画面
ぶーぶー社員情報照会画面
ぶーぶー社員情報明細画面
ぶーぶー社員情報登録画面
ぶーぶー社員情報修正画面

画面とは機能であり機能とは優先順位をつける対象である。そこで上の画面に優先順位をつけてみよう。

優先順位の付け方は、その画面がなくても他の画面を開発できるか、である。どういう意味か。
上の画面でいえば、社員照会画面はログイン画面から遷移され、照会明細画面は社員照会画面から遷移される。社員照会画面はログイン画面がなければ動かないし、社員明細画面は社員照会画面がなければ動かない。これらん踏まえた優先順位にリリース日を付与すると次の様になる。

ぶーぶーログイン画面:4/6リリース
ぶーぶーユーザ登録画面:4/13リリース
ぶーぶー社員情報照会画面:4/20リリース
ぶーぶー社員情報明細画面:4/27リリース
ぶーぶー社員情報登録画面:5/11リリース
ぶーぶー社員情報修正画面:5/11リリース

このように、アジャイルであれば1ヶ月半で全機能がリリースされるが、従来型のプロセスなら2ヶ月以上かかってしまう。では、何故アジャイルだと早くリリースできるのか。

理由はふたつある。ひとつはフィードバックによる設計またはプログラミングの学習効果である。社員修正画面は社員登録画面や社員明細画面のフィードバックにより開発工数は半分以下になる。
もうひとつは開発環境配布の容易さである。第1イテレーションで開発された画面は直ぐに配布され開発者全員が次のイテレーションの準備に入る事ができる。

ここでログイン画面がない状態を想像して欲しい。ログイン画面がなければ社員照会画面をどうやって起動するのだろう。
もちろん最終的にはその様な画面はリリースされないが、開発途中ではそのような状態にはなり得る。そして現場ではこの様なケースはしばしば起きる。社員照会画面の担当者はログイン画面なしで開発をしなければならない。つまりログイン画面の社員照会画面を起動する機能とユーザ情報を作成しセッションにセットする機能を、ログイン画面担当者でもない社員照会画面担当者が作らなければならない。これはログイン画面が先に開発されていれば全く不要な作業だ。要するにその無駄な作業工数が増大するだけなのである。