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~第一章~ 女天国、男地獄 #2

康平と健太郎は職員室に行く前に寄るところがあった。


抜けるような青空。気温28℃。汗が滲み出る程の暑さ。


『海に行ったら気持ちいーだろーなー』


窓から見える真っ青な空を眺めながら康平は言った。

ここは校庭のすみにある古い部室。だったが、今は誰も使っていなく、半、物置状態だ。とは言っても生徒の間では癒しの空間、つまり暗黙の喫煙所となっている。


『今日も元気でヤニがウマイ!』


埃まみれの机の上に穴の空いたスチール製のバケツが置いてある。


健太郎は、そのバケツに煙草の灰を落とすようにトントンと叩く。


『髪切りてーなー。前髪超ウゼーよ』


薄茶でさらさらヘアの康平が呟く。


『俺みてーにリーパー(リーゼントパーマ)にすりゃいいのに。』


健太郎は、パーマを当ててもすぐに直毛になってしまう康平の髪質を知っていて、ワザとニヤけて言った。

『ほっとけ!』


ぶっきらぼうに返事をしながら、康平は手にしていた煙草を揉み消し、バケツの中に入れた。


2人は髪型こそ違うものの、制服は2人揃って単ランにボンタン。現在では珍しいが当時はビーバップ全盛期。珍しくはない。


ただ、康平はこの制服にサーファーカット調の髪型は似合わない!と思って止まない。女子には羨ましがられるが、この頃の康平にはコンプレックスになっていた。


『さて、とっとと用事済ませて遊び行くべ!』


本来なら用事を済ませてから一服なのだろうが、順序が逆なのは何故だろうか。と言うよりも煙草は二十歳になってから!(笑)


2人はようやく職員室へ向かった。


そんな2人を余所に、蝉が大合唱を始めている。

~第一章~  女天国、男地獄 #1

『お前ら~、明日から夏休みだ!だからといってハメはずすんじゃねーぞー!校則違反は即停学親呼び出しだ!』


担任の先生の声が教室中に響き渡る。


だが…誰も聞いちゃいない。


担任は数学担当だが、教師2年目。ナメられまくっている。


おっと!言い忘れてましたが、ここは県立のとある高校。偏差値が低く、男子校でむさ苦しい。康平が通う学舎…のハズだが、大半の生徒は遊びに来ている。遊び舎だ。


康平は3年6組。一番後ろの席で大あくび。


『今朝までドラクエにハマって寝てねーから超寝みーや、帰ってソッコー寝るか』


心の中で固く決心したのも束の間、担任が思い出したかのように話す。


『康平と健太郎!後で職員室に来い!お前らは生活指導特別版を行う…と生活指導の針谷先生がおっしゃってたぞ』


『ざけんな!マジかよ!ハゲ谷の話しなげーからウゼーよ!』
第一声の声の主は健太郎。通称ケン。


『ケン、この間のヤニがバレたんじゃねーの!?』


『イヤイヤ、単車通学だべ!な。コー』


アチコチで余計なお世話的な憶測が飛び交う中、康平がやるきのない声で話す


『違げーんじゃねーの?まだったらだったで、学校クビだな。』


『したら俺も校長殴ってサラバだな』


健太郎がさらにやる気無さげに話す。


チャイムが鳴り、2人はかったるそうに職員室に向かった。

~登場人物~

※ 本編に登場したら追加されていきます。


*康平 (通称こーくん、コー)
主人公。何に対しても無気力だが、遊びとなると人が変わる。


*なつみ (通称ナツ)
ヒロイン。いつも明るく人気者。だが、お人好し過ぎるのがたまにきず。


*健太郎 (通称ケン)
コーの同級生。盛り上げ担当。但し短気。


*麗奈 (通称レナ)
ナツの同級生。さっぱりした性格の持ち主。姉御肌だが赤点常習者。


*針谷先生 (裏通称ハゲ谷)
康平達の高校の生活指導。頭が堅いのか軟らかいのかわからない。判っているのは頭が薄いことだけ。