相談の回答は「場合分け」 | 中学受験講師ブンブンのブログ

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中学受験の塾講師とプロ家庭教師をしています。指導のあり方、入試情勢、教えて思うことなどについて、書いていきます。

勉強方法や、受験校の選択に関する相談は、塾で教えている先生でしたら、日常的に行っていると思います。

普段から教えている生徒の相談ですから、生徒の成績、性格などをよく把握しています。ですから、よく成績・性格を把握したうえで、受験情勢などを十分に知っている者として、最善と考える回答をするわけです。

 

ところが、この常識が通じない相談をすることになりました。

今から20年近く前の話ですが、合同相談会の相談コーナーの相談員を頼まれました。

合同相談会というのは、50校~150校の私立中高が、1か所の会場に集まって、学校のPRをする場です。1校が180cmくらいの長い机を1つ使い、受験生親子が学校の説明を聞いたり、パンフレットをもらったりできるイベントです。

このイベントの総合的な相談コーナーに、私が座って回答するように、頼まれました。高校入試については詳しい先生が多かったのに対して、中学入試に詳しい先生が少なかったため私に声がかかったのです。

 

100校を超える大規模相談会でしたが、凄い熱気でした。

両隣に座った先生も塾の先生でしたが、大手塾の本部で受験情報を各教室に伝える部長クラスのベテランでした。受験雑誌で何度も見かけたベテランの先生の隣に、当時30歳代の若手講師の私が座ったわけです。

隣のベテランの先生が、相談してきた受験生親子に、回答を始めます。勉強のために、隣でさりげなく相談内容と、回答を聞く時間が結構ありましたが、これは大変勉強になる時間でした。

(100校以上が参加する大規模な相談会の様子)

 

ベテランの先生の回答で、なるほどと思ったのは、次の点でした。

『場合分けをして説得力を持たせる』

私から見ると、《大手塾の情報担当の責任者をしている凄い大先生》が回答者なのだけど、普通の受験生親子はそんなこと知りません。通っている塾の先生のアドバイスが半信半疑で、セカンドオピニオンとして念のため話を聞きに来る人も珍しくありません。でも、そんな人に対しても、回答に信頼性を持たせるために行っていたのが「場合分け」でした。

 

たとえば、質問と回答は、こんな感じでした。

質問:「国語・算数は順調に伸びて偏差値60。理科の力や水溶液等計算が必要な分野もバッチリ。でも生物や社会の暗記は苦手で平均点を争っている。暗記の時間を倍増させたほうが良いでしょうか」

回答:「志望校が偏差値60くらいなら、国語算数が安定していれば、あとは理科社会を伸ばすだけ。暗記分野の対策は6年夏からでも間に合うでしょう。無理して勉強のペースを崩すリスクもある。 でも偏差値65以上の志望校を狙うなら、毎週の勉強した知識をキッチリ頭に入れる姿勢がないと今後の伸びが厳しくなるので、今からしっかりさせないと」

 

質問:「5年の初めから中学受験の勉強のための塾に通っているが、半年たっても偏差値40前後で低迷している。転塾したほうが良いか」

回答:「授業の説明が分からないことが多いなら、レベルが合っていないので転塾が妥当。テストで間違えが多く、偏差値が低くても、授業での説明の多くが納得できるのなら、少しくらいシンドくても今の塾で頑張っては。」

 

 

このように、「場合分け」で説明されると、説得力あるのです。

★回答する側は、十分な情報と明確な根拠を持っていると、分かってもらえます。

★現在は情報が氾濫しています。他の考え方もある中で、「自分の置かれている条件なら、今回の回答が最善」と感じてくれて、他の情報に惑わされなくなります。

★志望校の変更など条件が変わってから再度(通っている塾の先生に)相談した時に、別の回答になるかもしれません。その際に「前回と回答が違う!」という不信感が生まれません。

「場合分け」でない回答の場合、相談する側としては、別の対応が良いのはどんな時か尋ねると良いと思います。

『実力判定に「首都圏模試」を受けずに、「四谷大塚の合不合判定テスト」がお勧めとのことですが、「首都圏模試」を受けたほうが良いのは、どんな生徒なのでしょうか。』

『先生は「ウチの子には麻布がお勧め」とおっしゃいましたが、「麻布に向かない生徒」はどんな生徒なのでしょうか』

こういう突っ込みで、有益な情報を引き出せるのではないかと思います。