※2012/4/7現在1円

今回はJ-POPのあり方を変えた存在でありながら、おそらく一番誤解されているアーティスト、久保田利伸を取り上げます。
日本にモダン・ブラック・ミュージックの要素を取り込んだことは間違いないのですが(田原俊彦に書いた「It's Bad」には大衆歌謡ながらすでにラップを意識的に取り込んでいます)、彼の本質は優秀なポップシンガーです。当時の歌手なら全音符一発で歌ってしまうところに音符を20個ぐらい突っ込んでしまう独特の節回しと当時のファッションから「黒いねー」ということになってしまうのですが、ニューソウルっぽい声と和風バラード(レコード会社の意向もあったとか)のマッチングなど、よく言えばオリジナルな、悪く言えば混乱した作品が自作まで続きます。
GROOVIN’

音作りには当時のCameoやZappの影響を感じますが、楽曲自体にはあまりそれは感じられません。そんな中で彼のパブリックイメージはますます固まっていきます。
Such A Funky Thang!

これまでにものすごく売れたせいもあって、彼の当時の意向がかなり反映された作品となり、一番パブリックイメージと作品が合致していた時期でした。傑作ファンク「Dance If You Want It」など、ブラック・ミュージックにどっぷり漬かった作品となりました。参加ミュージシャンも豪華だったと思うのですが、忘れてしまいました・・・。
BONGA WANGA

途中、ドラマ主題歌やBootsy CollinsとWilliam "Juju" Houseを迎えたシングル(悪かろうはずがない!)を出したりしていましたが、タイトルからも伺えるようにアフリカ志向を交えた作品となりました。ここからジャンルをまたがる作品を出し続けるのですが、世間的には「Funkyだよね、R&Bだよね」という評価は変わりませんでした。
KUBOJAH

突然レゲエです。当時はサブタイトルの"PARALLEL WORLD I"の意味がよくわからなかったのですが、ブラック路線のパラレルワールドがレゲエだったわけですね。その後このサブタイトルを持つ作品がないところに、単なるブラックミュージックフォロワーからの脱却の意思が見えます。ただ、当時のUKレゲエの影響も大きく、一方で軸の座らない印象も受けます。
Neptune

今度はラテンです。Ricky Martinあたりを先取りしていたと言えるかもしれません。ミディアム~スローテンポの曲も多く、派手な印象の割には練りこまれた作品です。
BUMPIN’ VOYAGE

ブラックミュージックに戻って来ました。が、原点に戻るわけではなく、今度は都会派ソウルです。スムースな手触りの曲が多く、この後この路線が続くことになります。
LA・LA・LA LOVE THANG

大ヒットした「LA・LA・LA LOVE SONG」収録ですが、全体の印象としては大きな冒険はない作品です。ようやく芸風が定まってきた印象ですが、結局日本人のポップを様々な様式と巧みな歌唱でいろいろな可能性を提示してみせた、単なるブラック・ミュージックのエピゴーネンではないミュージシャンというのが私の評価です。もう少しエキセントリックだったら、もしかしたらMichael Jacksonのような立ち位置に立っていたかもしれませんね。