名古屋に初めて電気を灯したのは、名古屋市に本社を構えた名古屋電燈株式会社であった。

明治21年10月より名古屋市南長島町(現・中部電力でんきの科学館)で本社および電灯中央局(火力発電所)の建設が進められ、明治22年11月3日に直流式の発電所(発電機25kW×4)が完成、明治23年1月10日に南桑名町の千歳座にて名古屋電燈開業式が執り行われた。

 

その後、名古屋電燈では供給力不足と石炭価格の高騰問題に悩まされる。そこで長良川での水利権を譲り受け、明治41年6月に岐阜県武儀郡洲原村立花(現・美濃市)で「長良川発電所」(出力4,200kW)の建設に着手、明治43年3月15日より発電を開始した。 下の絵葉書は、「名古屋電燈」が自ら発電所完成時に発行した「長良川発電所  竣工記念絵葉書」である。

△長良川 水力電気事業実況 絵葉書帖 表紙 名古屋電燈株式会社

△絵葉書 名古屋電燈 長良川水力電気工事「発電所全景」(明治43年刊) 
△中部電力 長良川発電所 全景
△長良川発電所 正面玄関(美濃市立花)
△絵葉書 名古屋電燈 長良川水力電気工事「発電所」(射水管)(明治43年刊) 

△長良川発電所 水圧鉄管

△絵葉書 名古屋電燈 長良川水力電気工事「児玉変圧配電所」(名古屋市西区児玉) 

△絵葉書 名古屋電燈 長良川水力電気工事「児玉変圧配電所  配電盤」 

 

発電所建設は、当時、名古屋市鶴舞公園で開催される第十回関西府県連合共進会(博覧会)の開幕に間に合わせることが至上命題となっていた。

これはパビリオンで電飾が予定されていたためで、開幕前夜の3月15日午後7時にようやく点燈、関係者一同が思わず万歳したと云う。共進会は3月16日から6月13日までの90日間に、入場者263万人を数えて大成功をおさめた。

△絵葉書 第十回関西府県連合大共進会「イルミネーション」(名古屋市鶴舞公園)

 

名古屋電燈は共進会の機械館において、長良川発電所の模型や電燈球、扇風機などを展示した。当時名古屋市内で唄われた俗謡に、「清き長良の水上 築き上げたる発電所 あれが名古屋の夜を照らす 粋な明かりの元かいな」とある。 

△清流・長良川と赤レンガの発電所
△岐阜県から伊勢湾に流れ下る長良川

 

この赤レンガの長良川発電所は、平成12年に登録有形文化財に登録、平成13年には発電所関連施設も登録有形文化財に登録、さらに平成19年度に近代化産業遺産に認定された。

 

〔追伸〕先般、オークションで、名古屋電燈・長良川発電所の新たなシリーズを発見入手した。説明書きによると、岐阜県武儀郡上有知町(こうずち)の地元・山岡商店が建設工事中に発行したもので、『長良川水力電気工事 絵はがき(八枚壹組)』という題名となっている。つまり名古屋電燈株式会社が発行したものではない。一般に知られている冒頭の絵葉書シリーズは長良川発電所竣工時に名古屋電燈が自ら発行したものであり、これは新たな発見と言える。

△長良川水力電気工事 絵はがき表紙

△絵葉書 「山上ヨリ見タル長良川水力発電所」

△絵葉書 「長良川水力電気 第二制水門」

 

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