N1105O-222 | chuang261のブログ

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アルフィリース達は魔女によって窮地を脱出する。彼女が語る事実とは・・・?
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ピレボスにて、その8~氷原の魔女~

「北の大地を隔離・・・?」

 その言葉をミランダが異国の言葉を聞いたかのように反芻したが、言葉の意味がわからないのはアルフィリースも、グウェンドルフですら同じだった。

「北の大地を隔離? そのような報告は私も受けていメンズ バッグ 楽天ないな。どういうことだ?」
「・・・北の大地には大魔王を封印しております」

 クローゼスの言葉にアルフィリースもミランダも、思わ
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男 カバンず目を見合わせた。グウェンドルフは眉がぴくりと動いたものの、予想の範囲内ではあったらしい。

「どの大魔王だ?」
「大魔王、テトラポリシュカ」
「あの、魔眼の女か」

 グウェンドルフが、さもありなんと言う顔をした。だが、事情がよくアルフィリース達には飲み込めない。

「ねえ、グウェン」
「なんだい、アルフィ」
「大魔王って、全滅したんじゃないの?」
「・・・そうか、君は知らないんだね」
「アタシも知らない」

 ミランダとて、魔王に縁浅からぬ身。この話の内容は気になったようだ。

「大魔王が全滅したから、人間同士で戦争をするようになったんじゃないのかい?」
「半分正解で、半分間違っているね」
「グウェンドルフ様。よろしいのですか、彼女達に話してしまわれても」

 クローゼスがグウェンドルフを諌めようとする。

「・・・構わないだろう。彼女達はもっと重大な危機に直面している。この事も知っておいた方がよいかもしれない」
「貴方様がそう言われるのなら」

 クローゼスは頭を軽く垂れ、黙する姿勢を示した。

「さて、大魔王に関してだね。実は大戦期末期の6体中、少なくとも3体は仕留め損なっている」
「!」
「なん・・・だって?」

 アルフィリースもミランダも、表情が強張った。なおもグウェンドルフは続ける。

「驚くのはまだ早い。さらにその内一体は、いまだに活動中だ」
「え」
「そんな、馬鹿な!」

 ミランダが声を荒げた。あまりに自分が知る史実と違いすぎるのだ。

「ならばどうして誰も討伐しないんだ?」
「まさか・・・」
「アルフィリースは勘がいいね」

 グウェンドルフが指摘するように、アルフィリースは何事かに気付いたようだった。ミランダが声を荒げたまま、アルフィリースの方を向き直る。

「アルフィ、何か知っているのかい!?」
「ううん。これは想像だけど、誰もその大魔王を倒すことができなかったのだとしたら?」

 アルフィリースが青ざめた顔で話した内容に、ミランダが怒りを収めた。そして、ミランダの頭がフル回転し始める。

「なるほど・・・それなら色々納得がいくかも」
「何か思い当たるの?」
「ああ、色々とね」

 ミランダが考えをまとめた様子で、頷いた。

「一つには、魔術教会ってのは仲が悪い集団なんだが、決して瓦解しないんだ。内部争いなんかはしょっちゅうやってるみたいだけどね」
「どうして?」
「アタシもずっと不思議だったんだけど、魔術教会の真の目的が、その生き残った大魔王の監視や滅殺が目的だとしたら?」
「近いが、当たらずとも遠からず、というところか」

 クローゼスが言葉を挟んだ。そしてグウェンドルフに目で許可を伺い、話し始める。

「グウェンドルフ様の口を煩わすまでもない、私が順を追って説明してしんぜよう。まず大戦期、6体の大魔王が存在したことはよいな? 当時、魔術教会、魔女、導師、アルネリア教会、果てはオリュンパス教会までもが結託し、各国の兵士との連合軍で大魔王の一体を滅ぼしている。だが結果は惨憺(さんたん)たるものだった。戦いに参加した者達の内、実に1/5が死亡。半数以上の者がなんらかの怪我を負った。その被害の大きさに、オリュンパスは以後大魔王との戦いから撤退することを表明。各国もまた、大魔王討伐に引け腰になっていったのだ。
 そして、残されたのはアルネリア教会と、魔術教会と、魔女と導師達。そこで我々は議論しつつも抗戦したが、決着はつかず、いたずらに時だけが流れて行った。ところが、気がつけば大魔王達は一体、また一体と姿を消していった」

 その事にアルフィリース達は心当たりがある。一人はライフレスがやったと言っていた。彼が史実に残らない所で倒したのだろう。だがそれが事実なら、ライフレス単体の戦闘力は、魔術教会全てと匹敵する可能性もある。彼の魔力量が魔術師10万人分というのも、本当の事なのかもしれないとアルフィリースは身震いする。
 そして、なおもクローゼスは続ける。

「そして大魔王が最後の一体になった時、人間達は賭けに出た。最後の一体を倒せば、もう魔王に怯えなくても済むと。そこで再び人間達は結束し、最後の大魔王に戦いを挑んだ」
「随分と打算的だが、まあしょうがないか。で、倒せなかったと」
「その通りだ。最後の大魔王の軍は徹底的に叩いたが、大魔王本人がどうしても倒せなかった。最後まで戦いに加わったのは、アルネリア教会、魔術教会、魔女、導師、あとは諸国の一部だが、彼らはその大魔王と休戦協定を結ぶことにした。なぜならそれ以上戦えば、どちらが勝っても二度と立ち直れないくらいの打撃を受けることはわかっていたからな」
「でも今悩むくらいなら、無理してでもそこで倒しておけばよかったんじゃ」

 アルフィリースが納得できないのか会話に加わろうとしたが、ミランダが首を振った。

「いや、それは無理だよ、アルフィ。確かに倒せたかもしれない。いや、今でもまた連合を組めば、その大魔王は倒せるんだろう。だからこそ大魔王も大人しいのさ。でもね、もし当時大魔王を無理して倒してたら、最後まで参加した集団は今頃跡形もなく蹂躙されているだろうね」
「誰に?」
「途中で戦争を抜けた諸国と、オリュンパス教会にさ」

 ミランダが吐き捨てるように言ったことに、アルフィリースは反論する。

「でも、そんな火事場泥棒みたいな真似」
「するよ。歴史は勝者がつくるのさ。死人に口無し、敗者は黙して語らずってね。オリュンパスはそれを狙って、ずっと外部不干渉を貫いているんだろう。機会があれば、あいつらは絶対にこっちに侵攻してい来る。アタシは仕事の上で何度か奴らと会ったり、場合にってはやり合ったこともあるけど、やりにくいったらありゃしない。大人しそうに見えて相当な戦力を保有しているからね、あいつらも。とんだ腹黒い連中の集まりさ」
「そのシスターの言う通りだ。当時の懸念事項も、まさにオリュンパスだったらしい。そして、当時の戦力と大魔王の実力を天秤にかけて、休戦協定を結ぶことに結論が出たのだ。それが大戦期の事実だ」

 クローゼスが語った内容に、アルフィリースとミランダが絶句する。まさか、歴史の裏がそんなに打算的だとは、露ぞ知らなかったのだ。同じ話をミリアザールから聞いたエルザも思ったことだが、世界の均衡は思っているよりもはるかに危うい事を、アルフィリースもミランダも実感していた。
 そこにクローゼスがさらに言葉をつなぐ。

「だが我々とて、何もしていなかったわけではない。魔術教会はさらなる魔術の研究を。アルネリア教会は陣地を広げることで、さらなる戦力の確保を実行した。その気になればオリュンパスとも全面戦争出来るほどのな。魔女や導師も、後進の育成に力を注いでいる。だから現在の魔女や、その後継ぎは歴代でも最高クラスの使い手ばかりだ。私も自分で言うのはおかしな話だが、既に魔力の量だけならお師匠を凌いでいる。その事はお師匠からも太鼓判を押されているからな」
「では、対策はあると?」
「うむ、後は機会だけだ。もっとも、向こうとて黙ってはいないだろうが。今回の団欒で、その事が話題に出るのではないだろうか」
「・・・遅かったかもしれない」
「何?」

 アルフィリースが呟いた一言を、クローゼスが問い詰める。そしてアルフィリースは黒の魔術師達の事を話した。その事実を聞くたびに、無表情だったクローゼスの瞳が見開かれる。そして色白の肌がよりいっそう色を失くしていくのを、アルフィリースは見たのだった。
 全てを語り終わり、沈黙が周囲を包む。

「・・・なるほど、事情はわかった。どうやら事態は、我々が想像するよりはるかに重いらしい」
「そうね。私もいまだに実感が無いわ」
「だが、戦うのだろう?」
「その通りよ。どうせ避けては通れない運命だろうし、見て見ぬふりをするつもりもないわ。だからと言ってはなんだけど、クローゼス。貴女、私の仲間になる気はない?」

 アルフィリースが突然クローゼスを勧誘したので、ミランダもこれには驚いた。

「ちょっと、アルフィ!?」
「いいじゃない。ミランダだって、私達が魔術に弱い事を指摘したわ」
「それはそうだけど・・・」
「どうかしら、クローゼス? 無理は承知でお願いするのだけれど」

 だが意外と言えば意外な事に、クローゼスは迷っているようだった。ミランダは即座に断られると思ったのだが、アルフィリースは何かしら感じる物があったのかもしれない。


続く

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次回投稿は5/25(水)10:00です。