火力信仰
コンテナの中身を解体工場に送り、昼過ぎまで眠った。狩りの続きは夕方からになる予定だ。
活動時間もそれぞれの種類ごとに決まっているようで、早朝と夕方、あるいは夜間帯に活発化するらしい。生体兵器といえど生き物である。
なるほど道理で前回はあれほど待たされたわけかとタクムは納得した。一匹目を狩るまでに3時間も待ちぼうけを食らったのは辛い思い出である。
そのおかげで<擬装待機(スキル)>を覚えられたわけだが、出来れば二度としたくないものである。
要するに釣りと同じである。獲物の活動時間に合わせるのは狩りの基本だろう。今後は狩りの時間を朝と夕の二つに分けると決める。
ガンマ周辺には大きな火山があるらしく、その熱波によって気温が高いらしい。ついでにこの辺が草ラルフローレン
ラルフローレン衣類
ラルフ ダウン
も生えない荒野地帯なのは大量の火山灰が振ってくるだ。そのおかげで狙撃に有利なポイントには事欠かず、擬装のための穴掘りが楽なのは不幸中の幸いである。
大休止という名のお昼寝を済ませ、昼食を取ったタクムは、街の南部へとマイクロ戦車を走らせた。
三日前の早朝の狩りで北部は狩りつくしたと考えられるためだ。
アイの誘導で狙撃ポイントを確保。ワイヤーアームのこさえた穴に潜り込み、タクムは銃を構えた。
マイクロ戦車が余った肉を放り投げる。餌は見事な放物線を描ぎ、300メートル先の地面にべちゃりと叩きつけられる。投げたのは今朝方仕留めた15体の生体兵器の中でもことさら状態の悪かったホットドッグだ。
内臓をさらけ出したまま1時間もの間、荒野に晒され、コンテナの中で更に4時間も熟成されたそれはかなりいい感じの臭いを放っている。
腐りかけというか半ば腐っているので臭いも強烈で、誘引効果はかなり高いだろうと思われる。
ちなみに生体兵器には同種食いに対する忌避感はないらしく、肉を放置すれば亜種であるリザードッグはおろか、ホットドッグさえもバクバクと食べ始める。
そんな哀れな死体に鞭打つように、タクムはデイドリームで餌を狙い撃った。スコープを何度かクリック、この辺のさじ加減は既に慣れた物、最適な調整を終える。
むき出しの肋骨に一発、尻尾の先に一発、2度の試射を終え、アイが尋ねてくる。
『マスター、準備は?』
「おう、大丈夫だ。任せておいてくれ」
そう答えたタクムは待機行動に移った。
夕方、赤々と染まり始める世界。新たな狩場には朝よりも更に多くの獲物が倒れていた。
『いやー、大猟大猟。マスター、今日はこの辺で上がろうか』
無線で繋がったヘッドセットからアイが提案する。ヴォーカロイド声は全体にいつもより高く、強弱やイントネーションもはっきりしている。興奮しているのだろうと推測されるが、果たして人工知能にそんな感情はあるのだろうかとタクムは不意に思ってしまうことがある。
それではまるで生きているのと同じではないか、と。アイの振る舞いはまるで人間と変わらない。
「おう、そうだな。ていうか、コンテナ入るのか?」
結論を保留し、タクムは応答した。満足そうな口調なのは彼も同じである。
アイがあえて大猟という言葉を使う通り、タクムはかなりの数の生体兵器を打ち破っていた。
その数、なんと37体。戦果は僅か一時間の間で稼いだものだった。
開始から50分ほどはいつもと同じ10分に1度のペースで現れるリザードッグやその他の小型生体兵器を撃ち破っていたのだが、突如、30匹以上のアントゴーレムの群れが現れたのだ。
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アントゴーレム
体長2メートルほどの蟻型生体兵器。鋼鉄性の硬い外殻を持ち、鋏状の牙で攻撃をしてくる。また臀部の穴から射出される生体砲弾は弾速こそ低いが、強力な蟻酸を詰めたカプセルであり、装甲を溶かし、肌に触れれば重度の火傷を負う。迫撃砲のように放たれるため有効射程は1000メートルにも及び、更には常に集団で行動するため、単独で対するのはかなりの危険が伴う。
小型生体兵器を現すD級の中では最も脅威度が高いと言われている強敵である。
脅威度:D+
生命力:D
近/中/遠攻撃力:E/D+/D+
装甲:D
俊敏性:F
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連中は一列になって地面に置かれた獲物に噛み付き、持ち去ろうとしたため、タクムはデイドリームのマガジンを外して、大容量120発給弾ベルトに換装した上で、フルオートで撃ち抜いた。
およそ30秒間に渡って引き金を弾き続け、敵集団に満遍なく銃弾をお見舞いすると、生命力、装甲値共に戦闘車両なみの頑丈さを持つアントゴーレムも倒れた。
デイドリームを手に入れられて本当によかった、とタクムは思った。これまでで最強の小型生体兵器ですら対物ライフル弾である.338 ラプアマグナムで一撫ですれば簡単に終わらせられる。
やっぱり火力だ、とタクムは確信する。銃は火力が命。ブローニングM1918とデイドリームではその破壊力に圧倒的な開きがある。一般家庭のコンロと中華屋さんのコンロぐらい桁が違う。一度使ったらもう元には戻れない。
もしもこの銃を失うことになったら、タクムはマイクロ戦車のブローニングM2を銃座から取り外して使い始めるだろうことはもはや疑いようのない事実であった。
『回収ー回収ー』
戦車が擬装を解き、穴倉から這い出てくる。砲塔に備え付けられた二門の銃火器を見て、タクムは目を輝かせる。ブローニングM2に使われる12.7ミリ弾の威力は13500ft-lbs。デイドリームが使用する.338 ラプアマグナム――4800ft-lbsよりも更に、ずっと強力な銃弾なのである。
今度、ドリームに12.7ミリ弾を使用した短機関銃かマシンピストルでも作ってもらおうかとタクムはのんびりと考えていた。
『マスター! 戦車を横付けするから、したらすぐに乗って!!』
そんなタクムの耳にアイの切迫した音声が届く。
「どうしたんだ? そんなに慌てて」
『出たんだ』
「出た?」
『中型生体兵器(ジャイアントゴーレム)が!』