N4527BC-187 | chuang205のブログ

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Sense187

 後日、タクをエレメントクリームの性能実験のために呼びつけた。

「へぇ。これが防御属性を変えるアイテムね~。どんなもんだ?」
「作るの面倒だったけど、納得のいくレベルまで作り上げた。けど、液体系のモンスターの素材のストックが大きく減ったんだよな。手持ちに素材があったら、買い取りに色を付けるぞ」
「そうだな。粘菌スライムの強酸ゼリーとムーア・フロッグの胃袋なら余ってる。それでいいか?」
「それは、駄目だな。それを混ぜると属性じゃなくてダメージが発生するから。けど、ダメージ・ポーションの材料だから普通に買い取りはしてるぞ」
「うーん。後は、手持ちだとコカトリスの血と羽だな」

 タクの言葉に俺は眉を寄せる。

「コカトリス? 聞かないMOBだな。何処で出現するMOBなんだ?」
「ああ、ユンは初耳か? 最近、北側の攻略で山を突破した先に出るんだ」
「あの絶壁の……」

 以前、タクとパーティーを組んだ時に登山をした記憶に、微妙な表情を作る。

「いや、壁にぽっかりと洞窟があってそこを通ると開けた平原に出るんだ。洞窟内部に出るMOBも確か液体系のドロップを落とす筈だから、今度行くときに狩っていくか?」
「今手持ちは無いのか?」
「狭い場所で美味しくもないMOBを狩る意味はないからな。走って逃げる」
「それにしても今まadidas オンライン
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で良く知られなかったな。俺たちが登った所よりも上か?」

 まぁ、それなら登る途中で蜂や空飛ぶ蛇からの襲撃で結構辛かった記憶がある。慣れない人には苦戦するだろう。

「いや、俺たちが登ったのは、あれより下にある」
「はぁ? あの登山好きの二人が見逃したのか?」

 イワンとヒヤマ二人の二人の趣味プレイヤーが見逃すとは思えなかった。時折、店でアイテムの補充に来るが、彼らの主な狩り場がその北側だからだ。

「あの二人は、随分前に見つけてたみたいだぞ。最初は入って返り討ちにされてたから。この入り口は諦めて素直に山を越えよう……って。そしたら忘れてたらしい。新しい岩場が欲しいって言ってたから興味の無さが伺えるな」
「何と言うか。二人らしいな」

 呆れと苦笑の混じった呟き。次に会ったらいい景色の場所について聞いたり、火山帯の炎熱ウォーキングコースを紹介してやろうか、とちょっと意地悪な思いが頭を過った。

「まぁ、そんな感じだ。それじゃあ、幾つかサンプルを貰って試すけど、ユンも来るか? さっき言ったコカトリスの出現する場所まで案内するぞ。まぁ、俺のレベルでも倒せないMOBが出るエリアだ」
「そんなのレベル差があってコカトリスを倒せるのか?」
「大丈夫だ。平原のMOBのレベル差は、その一種以外は、普通に俺たちの適性レベル帯だ。それにそのレベルの高い一体も逃げれば問題ない」

 そんな物なのか? と首を傾げる。タクは、今から行くか? と尋ねてくるので、頷く。

「装備は、登山用具を持って出れば良いよな」
「なら行くか。継続効果のアイテムの検証は時間が掛かるからな」

 俺たちは【アトリエール】から北側へと移動。タクの案内で洞窟へと向かう途中、何人ものプレイヤーが同じ方面に向かうのを確認した。
 また、タクとの打ち合わせをしながら、道中遭遇する敵を軽く薙ぎ払っていく。

「まずは、洞窟で軽く狩りと防御属性を試そう」
「良いのか? あんまり美味しい敵じゃないんだろ」
「結局、エレメントクリームの効果を調べるんだ。お前を連れてコカトリスの群れで検証はしたくないからな」
「じゃあ、商品用のサンプルと効果を落としたサンプルで継続時間と効果の差を見るって事だな」
「それと、防具の防御属性と共存できるか。後は、ユンの【属性付加】の共存も確認しよう。全部可能なら、三重の耐性を得られる事になる」

 まぁ、その辺は重要か。言われなくて気がつかなかったが、こうしてタクの意見を聞くと自分の足りない所が良く分かる。
 タクの話に感心しつつ、洞窟のある真下へと到着したが、そこは非常に見苦しい光景が広がっている。

「なぁ、素手で高さ十数メートルを登ろうとするのはどう思う?」
「流石に無茶だと思うぞ。素人がセンスの補助無し、道具無しで登るのは……」

 今まさに、俺たちと同じ方向へと向かっていたプレイヤーたちが目的の洞窟を目指して岩壁に張り付いているが、色々とツッコミ所が多い。
 戦士職は、まず鎧を脱げ。そして、安全装置も無しに登って、複数人を巻き込んでの落下の被害が甚大過ぎる。また昇ってる最中に敵に襲撃されて落ちてくる人も居る。慣れない場所での戦いをサポートするために下から魔法で援護しているなど、普通の登山じゃない光景が目の前に広がる。

「アイツら、イワンたちに紹介したらどうなるかな? 一気に登山人口増えそう。ユンはどう思う?」
「いや、俺としては、アイツらこの先大丈夫かな? どっかで詰むんじゃないか?」

 例えば、水中型ダンジョンや水上イベントなんかがあった場合、鎧を装備したままセンスも無しに海に飛び込んでいく姿が容易に想像出来てしまう。

「どうやって登る? あそこを真面目に通ると巻き添えを受けそうで怖いんだけど……」

 俺の言葉に、同意見のタクは、苦笑いを浮かべる。

「そうだな。回り道でもいいから少し離れた所から登って、横移動で入ろう」
「じゃあ、行くか」

 俺たちは、左側の少し人目の着かない所へと移動する。移動する俺たちを追う様な足音が聞こえたために二人揃って振り返ると、見知った顔が居た。

「ユンくんに、タクくん」
「げっ、遠藤」
「げっ、って何よ。ちょうど二人を見つけたから後を追ってきたんだけど」
「エミリさんは、どうしてここに?」
「上の洞窟を目指してるんだけど、流石にあんなごちゃごちゃした所を登るのは、嫌で少し離れて見てたの。それで二人を見つけて、声を掛けたわけ」

 じゃあ、目的は同じようだ。
 タクに視線を向けると、軽く頷いてくれた。

「この際、一人二人増えても俺の負担は変わらないし、一緒に行くか?」
「ええ、もちろん。でもこの場をどう登っていいか。そのレクチャーをして欲しいんだけど、お願いできる?」
「道具は?」
「一式準備とセンスは取得したけどね」
「じゃあ、鎧とかの重量装備を外して軽量化してくれ。俺が先行してルート確保する。ユンは、一番最後でフォローよろしく」

 タクが俺たちに的確な指示を出していく。その点では、リーダーの才能があるんだろうな。と思ってしまう。
 指示に従い、さっそく登り始める。タクは、慣れた感じで進んでいき、俺もブランクはあるが、一度慣れているために下からエミリさんのフォローをする。
 エミリさんは、まだセンスの補助を強く受けてないが、下から見上げる俺がセンスの補助で見えるマーカーを口頭で伝えていく。

「ユンくん、ありがとう。二人は、ここに来たことあるの?」
「ああ、偶然知り合った登山好きの二人にレクチャーして貰ったんだ。洞窟のある高さよりも上まで行ったよ」
「ふふっ、頼もしいわね」
「まぁ、ここ以外でも使う機会はあるけどな」

 タクは、先行しながら、山肌に杭を打ち付け、安全に進んでいく。
 何度か、単体で敵の襲撃を受けるが、その都度、タクが切り払い、俺が魔法で撃退していく。以前は、夜の進行と鉱石採取で俺が守られる側だったが、今回は守る側という事にちょっと嬉しさを感じる。

「洞窟の高さまで来たから、そこの段差で休憩。その後は、横移動で進もう」
「分かった。それにしても、大変ね。もっと簡単な方法は無いのかしら?」
「飛行できる使役MOBでも持っていれば別じゃないのか? それかミュウやセイ姉ぇのような……いや、今のは忘れてくれ」

 俺が言おうとしたのは、二人ならそんなあり得ない事を平気でやりそうだという思いと事実それは無いだろうと心の中で否定した。
 ミュウは、動作系のセンスを持ち、壁蹴り、三角跳びなどゲームでしか見たことが無いような動作を平然とやってのける。それなら壁の垂直走りくらい出来そうだと考えたが、余りに角度と高さがあるために、一息で走り抜けられないだろうと思う。
 セイ姉ぇの場合、氷の道を作って歩いて登りそうだ。以前作った氷の助走台は、この高さよりも二回りほど小さいから可能かもしれない。

「ミュウちゃんとセイさんなら、別の方法で突破したぞ」
「へぇ、妹ちゃんがね。どうやって?」
「この山肌にセイさんが氷の柱を生み出して、それを蹴って登ってた」

 予想の斜め上を行く合わせ技かよ。上では、タクが休憩できるスペースにエミリさんを引き上げ、それに続いて俺も登っていく。

「はぁ、疲れた。慣れないことはする物じゃないわね。今度から飛行系のMOBでも作って行こうかしら」
「飛行系って。それって錬金?」
「違うわ。合成の分野ね。一つの目標になれば良いし、教えても良いかな? 錬金の上位センスは、錬金術。合成の上位センスは合成術って言うの」

 壁を背にして三人が横に並んで座り込む。俺は、エミリさんの話を聞きながら、軽くつまめる物と飲み物を用意する。

「エミリさん、前に言っていたトゥーの実の砂糖漬けと飲み物です。どうぞ」
「ありがとう、ユンくん」

 俺から瓶詰めのトゥーの実の砂糖漬けと魔法瓶の保温されたお茶を受け取り、タクにも回す。
 この魔法瓶。別に、本当の魔法瓶では無く、企業の販促用広告アイテムだ。デザインと保温性をゲームで再現しているが、ファンタジーに魔法の要素など欠片もない保温瓶を持ち込む光景って結構シュールな気がする。
 この広告アイテムは、ステータス的な恩恵がないけど、ついつい買ってしまう。

「それでね。簡単に言っちゃうとそれぞれの上位センスは、自身の使役MOBを作る事が出来るの。錬金では、素材を指定してそこからゴーレムやサンドマンなんかの無機物系MOB。合成だとMOBのドロップアイテムを組み合わせて合成獣(キメラ)を作り出すスキルが追加されるわ」
「成程ね。だから、二体のMOBを使役していたのか。でも普段は、戦闘に使わないだろ? 【調教】センスで成長させればいいのに」

 タクの質問は、もっともだ。だが、エミリさんは、お茶を一口飲んでからデメリットも説明する。

「残念だけど、センスで作られた使役MOBには、拡張性が無いのよ。センスのレベル固定だから、基本は単発よ。錬金の場合、MOBの作成に五十個単位の素材。受けたダメージの回復も素材で行うし、合成獣の方は、通常の回復手段が適応できるけど、同じく作成に五十個単位の素材を複数種類の組み合わせを試さないといけない。強いMOBの素材を組み合わせても必ず強くなるわけじゃない。正直、一体作るのにもコストが高いのよ」

 瓶のトゥーの砂糖漬けを摘まんで、味わい、お茶を飲んでほっと息を吐き出すエミリさん。俺は、その話を聞いて俺も新しいMOBが必要か考えたが、現状要らない様に感じる。
 確かに、ソロでありながら簡単に戦力を揃えられるのは魅力的だが、MP消費量を考えると余り手は出したくない。まぁ、その都度必要に応じて、何らかのセンスの代用が可能なんじゃないかと考えている。
 
「さて、そろそろ休憩を終えていくか」
「そうね。行きましょうか」

 タクとエミリさんが進行を再開するので俺も考えを中断する。まぁ、錬金術と合成術のセンスに関しては、そのレベルまで引き上げてから考えていいだろう。と思った。

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約一週間のインターバルで気力を回復。