N4527BC-51 | chuang2のブログ

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Sense51

 俺は、新しく出来た生産室とそこに運び込まれていた新たな調合キットを満足そうに眺めていた。

「ヤバいな。ヤバいよ、キョウコさん。にやにやが止まらない」
「そうですね。これで最低限の見栄えは確保できましたね」

 部屋の隅には、今まで使っていた携帯炉が置かれており、光を取り込むための窓や明かり用のランタンの下がる梁。そして木製のシンプルな台が置かれている。

「あー、ここで他人を呼んでお茶でもしたいよ。と言うより自慢したい」

 余りの嬉しさに、至るところを触る。石造りの壁の手触り、調合キットの大きくなったすり鉢、木製の窓、そして、素材保存用のアイテムボックス。
 子どもみたいな喜びように、キョウコさんは、微笑を浮かべ続けているが、余りやり過ぎると苦笑されかねない。気がついた俺は、わざとらしく咳払いをして話題を切り替える。

「そう言えば昨日渡した、除虫菊の種と苔石ってどうなった?」
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 そうだ。数を増やすために、畑に撒いて貰ったが、収穫はどうなっているのだろう。

「花の方は、順調ですよ。ちゃんと上質な花になっています。後は、畑の周りに置かれた岩の傍に置いておきましたら、少し増えていました」
「そうか、じゃあ、花は収穫して種にするよ。苔は、もう少し放置して数が増えたら、収穫しちゃおう」
「そうですね。それとこっちのもアイテムボックスがあるので、収穫した物は、こちらに置いておきますね」
「そうだな。商品と素材は分けておこうか。後は、お金に余裕が出来たら、材料の買い取り表でも作ってみるか?」
「最初から出来るだけのお金があれば、ユンさんは外に金策に奔走せずとも、付加価値で利益を上げられるんですがね」

 はぁ、と溜息を吐きだすキョウコさん。いや、苦労を掛けます。

「大丈夫だって、ほら、この新しい調合キットで商品を増やしていくから! きっと売れるさ! 多分」
「……多分ですか。まあ、今のところ商品の在庫が多いのですぐには、売り切れは起きないでしょうし、畑の収穫物は全て、実験に使いますか?」

 暗に、客が来ないから在庫残ってますよ。と言われた気がするが、気にしない。

「うん。使ってみるよ。今までできなかったモンスター肉や活力樹を生かせると良いな。ま、まずは、道具の確認だ」
「頑張ってくださいね。では、店番しています」

 そう言って、表のカウンターへと出ていくキョウコさんを見送り、俺は、調合を始める。まずは、本を読んだことの確認だ。
 大きくなったすり鉢で大量の薬草入れて、ごりごりとすり潰す。前は、金欠で一人屋外でごりごりとすり潰していたのを思い出す。すり潰した液を鍋で煮詰めて、作った初心者ポーション。
 だが、今回は、すり潰した薬草を成分抽出機で、薬効と不純物に分離していく。
 この方法でも合成でも消費する薬草の数は違いはないが、効果はどうなんだろう?
 成分抽出が完了するまでは、借りてきた本でも読みながら待つ。
 借りてきた四巻の内容は、モンスター肉の一般的な扱い方の本らしい。これからモンスターの肉を扱う俺としては、嬉しい情報だ。
 なになに? モンスターの肉には、毒などの不純物が多く含まれている事があるので、食べる方法は勧めない。
 へぇ~。製法は、モンスターの肉を細かく刻んで、ポーションと煮詰め、濾す。うん、全く説明になってない。解毒ポーションと基本の作り方が変わらないな。なにか別の手順を踏めば効能が高くなりそうなのだが。
 他の目ぼしい情報は、おまけのようにちょこんと記載されている複数の成分を含む混合液から特定の成分を抽出する方法があった。
 重要そうなので、インベントリに収められているノートと万年筆を取り出し、メモを取る。

「えっと、複数の成分を含む混合液から特定の薬効を取り出すためには、幅広な大きな紙に混合液を浸して、浸透性を利用する。ってペーパークロマトグラフィーじゃん」

 割と最近学校で習った内容に、そう呟いてしまう
 でも、有用そうだな。紙は、濾過に使うろ紙で代用できる。方法が広がれば、色々試せるとは良い事だ。
 他の情報は……『疲れたあなたの心を癒すハーブの香り』
 と銘打たれたページに、あれ?本間違えた? と首を傾げたがどうやら違うようだ。
 ハーブティーの作り方、乾燥させたハーブと生のハーブとの違いから美味しいハーブディーの入れ方までが事細かに記されている。
 興味深い内容に、俺は食い入るように見て、ノートに内容を書き写す。
 驚いたことに、ハーブティーは、回復アイテム扱いだ。HPとMPの双方を微量ながら回復する効果。回復の程度は、ポーション程度だが、初心者には嬉しいアイテムなのではないだろうか。

「ハーブってどこで売ってるのかな? ってヤバっ! ポーション」

 雑貨屋とかに売っていれば良いが、と思うなか、成分抽出機を必要以上に稼働させていたようだ。濃縮された薬効がポーション二本分程度に濃くなってしまっている。


 濃縮ポーション【回復】


 となったポーションだが、その効果は、決して高くない。濃縮なのだから薄めれば良いよな。と思い、一本の濃縮ポーションを蒸留水で五倍に希釈すると、五本のポーションになった。回復量はもちろん通常のポーション。
 もう一本を十倍で希釈すると、初心者用ポーションに変わった。

「なんか、失敗して出来たけど、この濃縮ポーションって何に使うんだ?」

 分からない。回復量は高くない。手元の本からそれらしい単語を探したが無かった。
 他の本に詳しい情報が載っているのもしれないために、今度探してみるしかなさそうだ。おっと、忘れないようにノートにメモを取る。

 その後も、様々な素材を抽出機に掛けて見た。
 解毒草、解痺草、薬霊草、魔霊草、各種の肉やドロップアイテム。

 薬草系統は、一度乾燥させたものを抽出機に掛けると通常よりも微量ながら多くの薬効を抽出できるようだ。
 解毒ポーション、解痺ポーションの効果も上がり、【解毒2】【解痺2】と二段階状態異常を上げる薬になった。手間を掛けてみる物だ。
 ハイポーション、MPポーションは、効果が1割増。といった程度だが、リスクもないために、今後は、抽出機経由での生産になるだろう。
 ついでに言うと、新しい調合キットを投入してから、調合のスキル画面に変化が生じた。素材を調合する場合、使用する器具や手順を指定して調合するように画面が変化した。
 今までのような一発変換ではなくて、作業工程を選択、その選択過程を行ったとしてのスキル生産のようだ。だから、適当な組合せではアイテムが劣化し、最適な組合せは効果が増加する。また選択する工程が複雑になればなるほどMPを多く消費するなど、調薬の難易度が更に上がったなど、細々とした変化は増えた。

「うわっ……選択肢が増えてるし」

 まあ、工程が複雑化すれば良いというわけでもない。ブルーポーションを抽出機に掛けたら、ブルーゼラチンになってしまった。
 また成分抽出機のMP消費が非常に高いために、連続使用も出来ないのだ。

「まぁ、本を読んで回復させながらで良いだろう。それにしても薬は毒にもなる。って言うけど、毒薬作れるんだな」

 コウモリからドロップされる毒血から成分抽出すると、【毒薬・微】が入手できた。【毒物】とは別のアイテムだ。毒は、名前の通り、状態異常を引き起こすアイテム。
 この毒薬五つを更に成分抽出すると、【毒薬・弱】というアイテムに変化する。こちらは、毒2の状態異常を発生させる。法則的に考えれば、更に五倍とすれば上位の毒薬に変化するだろうが、アイテムの限界か、それ以上の濃縮はできなかった。
 だが……

「はははっ……ルートが一つだけではないと俺は知っているのだ。」
 持ち物に余っていた毒血全てを消費して、何とか生産した【毒薬・弱】を久しく使っていなかった錬金の上位変換を利用することで、調薬の限界を別ルートで回避することに成功した。
 たった一個の成功例だが、それは俺に取って大きな進歩である。

「出来たアイテムが、【毒薬】で毒3のバッドステータスか」

 十秒で1%のダメージだから、それが一分三十秒。最大9%のダメージを与えるアイテム。
 俺は他に、毒と名のつくアイテムから毒薬を精製できないか、研究を始めた。
 毒物に始まり、モンスターの肉、そして、かつて恐れていたポイズンドーザーからドロップを砕いて、水と混ぜ、抽出機に掛ける。
 だが、生成できるのは、一番弱い【毒薬・微】であり。どれもこれも【毒薬・弱】までしか濃縮できない。
 更に、毒薬で錬金で引き上げることが出来るのは、毒薬まで。それ以上は、失敗してしまう。
 法則を考えるなら、状態異常系アイテムは様々な方法で効果を増加することが出来る。その上昇段階は、基準から最大二段階まで上昇出来る。と言うことだ。
 この法則は、解毒、解痺ポーションにも適応ができて、錬金で【解毒3】と【解痺3】の効果のポーションを作り出すことが出来た。

「毒薬3に、解毒が3か。もしもの時には使えるけど……一個単価が高くなって売れねぇよ」

 一応、作るのには苦労しないが、売るとなるとどうしてもコストが掛る。
 願わくば、もっと強い毒を持つ敵が出現して貰いたい。いや、ブル・ビートルがいるな。でも、一人相手にするには、手間が掛る。

「はぁ~、やっぱり、弓だけでカブトムシの相手は無理だな。マジック・ジェム量産して、罠に撒きこむ方が良いか」

 手持ちの材料で試せる調合方法は、まだたくさんあるが、大分時間が経過していることに気がつく。
 今日の調合は、これくらいにすると同時に、宝石の採取が必要だな。と実感させられる。