アニメ制作会社 A-1 Pictures の元社員の退職後の自殺が
労災認定されました。

この業界に疎い私でも知っている宇宙兄弟、黒執事といった作品を制作していますし、
スタジオが阿佐ヶ谷、高円寺と馴染みの町にあり、
何度もスタジオの近くを通ったことがあったので、なんとも言えない気持ちです・・・


【長時間労働による精神障害の労災認定】

労基署では、亡くなった方の残業時間を月130~340時間程度とし、それが引き金となってうつ病を発症し、自殺した、として労災を認めました。

長時間労働での労災で認定されるかどうかの評価方法としては
例えば以下のことがあります。

●精神障害発症前2ヶ月連続して1ヶ月あたり概ね120時間以上の時間外労働を行った

あるいは

●発症前3ヶ月間連続して1ヶ月あたり概ね100時間以上の時間外労働を行った

アニメ制作ならこのくらいの残業は当たり前でしょうから、事業主が抱えるリスクも相当大きいわけです。

今回のケースでは病院のカルテでは月600時間との記載もあったとのこと。
一晩の徹夜でも、頭はもうろうし、身体は疲れ果てて、思考も停止してしまう程です。
月600時間の残業時間など、心身がどうなってしまうのか
とても想像つきません・・・

長時間労働が心身に与える影響が認められているだけに、
労災認定ではかなり機械的に処理され、労災が認められやすいのです。


【安全配慮義務違反と損害賠償請求】

労災認定されると、ご遺族の次のステップとしては、
「安全配慮義務違反」として損害賠償請求でしょう。
亡くなった方は28歳だったとのことですから、かなり多額となるかもしれません。

事業主は労働者が安全で健康に働けるよる必要な配慮をしておかなければなりません。
今目の前の危険だけではなく、「予見可能な危険」に対しても何らかの措置をする義務を負っているため、在職中にうつ病を発症していなかったとしても、
<このままならうつ病を発症するかもしれない>という段階から
対応が求められれいるわけです。


【未払い残業代】

そして、この残業時間について残業代が一切払われていなかったとのことですから、
これから2年遡って、全スタッフを対象に未払い残業代を計算し、支払い命令が出るでしょう。

HPをみると10名以上のスタッフがいるようですし、相当な額になりますね。
月給20万の社員が月150時間残業したとして試算するとざっくりで約21万円の未払い残業代。
10名分でひと月210万、2年間の未払い残業代は約5,040万円です。
各人の給料が高ければこれ以上の残業代です。
今回、労基署は情け容赦なく、取り立てると思われます。

損害賠償額を合わせて1億円近くが必要かもしれません・・・


【労働契約】

昔の徒弟制度のようにはいかないのです。
労働時間であれば賃金を、法律で定める時間を超えれば時間外の割増賃金を払わなければなりません。

事業主としては、
◆無駄な時間がないかチェックし、
◆働かせ方を考え、
◆給与の設定の仕方を見直し、
 かつ、それらの内容を
◆労働契約や労働条件通知書で本人にも伝える必要があります。

もちろん法律の定めは最低条件です。

事業主としては、
変形労働制や休憩時間の設定、固定残業代など、いろいろ工夫が必要です。

お金の問題だけではなく、健康面への影響で命を落とすこともあるという点を
認識しておかなければならないのです・・・