「…ん?」
帰り道
特に急ぐ用事もなく、ゆっくり歩いていると、地図を見ながらふらふら歩いている少女を見つけた。
歩いているというより、地図を見てはあっちへフラフラ、こっちへフラフラと、さまよっているように見えた。
普段なら関わるのも面倒くさいから避けるのだが、今日はちょっとだけ気が向いた。
頭をかきながら、ゆっくり声をかける。
「あの…どうかしました?」
少女は一瞬ビクッとしながらこっちを向いた。
そして(何故か)俺の顔を見ると、安心したように微笑んだ。
「ええ、実は今日こちらに引っ越して来たんですけど、家がどこか分からなくて…」
「…なるほど」
急にやる気が削がれた。
まぁ、この町には生まれてからずっと住んでるし、場所も大体分かる。
「ちょっと地図を見せてもらってもいいですか?」
「あ、どうぞ」
「…………」
どうしよう。
家の近くだ。
ここで軽く場所教えて終わろうと思ってたんだが。
面倒くさいなぁ…。
「あのぉ…」
しかし、隣で少女がこちらを待っている。
声かけたの俺だし、仕方ないか。
「じゃあ、俺の家の近くなので、案内しますね」
「本当ですか!?お願いします!」
少女は飛び上がって喜んだ。
元気な人だなぁと思いながら、俺は歩きだした。
「あの!」
振り返ると、少女はスッと手を差しのべてきた。
ニッコリと笑いながら。
「渡辺紗奈です!よろしくお願いします!!」
「…相川将太です」
軽く気圧されながら、俺も手を差しのべた。
こうして、彼女との話が幕を開けたのだ。