「…………ん」
男は目を覚ました。
「おはようございます」
私が挨拶すると、男は顔だけこちらに向けた。
かなり驚いているようだ。
「ここは私の家。あなたは私にここが初浦市か聞いた後、急に倒れたの。それで、ひとまず私の家に運んだってわけ」
一通りの状況説明をすると、男は少し安心したようだった。
「起きましたか?」
母が顔を出してきた。
「あなた、38℃も熱がありましたよ。今お粥作ってますから、今日は家に泊まっていってください」
「いえ、そんな…!」
「いいんですよ。そこは主人の部屋ですし、その本人も都会で働いてるから、たまにしか帰って来ないし。蛍、熱計ってあげなさい」
「うん」
母はまた出ていった。
「あの…」
男がモゴモゴ言っている。
「自己紹介まだでしたね。私、牧野蛍」
体温計を取り出しながら言うと、男は面食らったようだが、ニッコリと笑った。
笑ってる姿はかっこよかった。
「そうだったね。私は土師港人(ハジ ミナト)」
私達は小さな部屋の中で握手した。