「うぅ…」

まだ少しだけ頭痛がして身体が重い。

年末に立て続けにあった怒涛のパフォーマンス披露で心身共に疲弊し、完全に体調を崩してしまった。

この間から寮を出て一人暮らしを始めた私は、自室のベッドでひとり孤独を感じていた。

昨日病院で熱を測った時には38.4度だったのだが、この家には体温計すらあるはずも無い。

自分の体温すら分からず、怠さで動くことも出来ない私はただただ困惑していた。

夕方にはマネージャーが様子を見に来てくれるそうだが、今何時なのだろうか。


__ピンポン


真っ白な天井を見上げながらぼんやりとそんなことを考えていた私の耳に、チャイムの音が聞こえてきた。

「…はぁい」

やっと来てくれた……

孤独から解放されることに少し安堵して身体を起こす、が__

……ドスンッ

「あ、れ?」

身体に全く力が入らず、起き上がった瞬間バランスを崩し不格好にベッドから落下してしまった。


__ピンポン


「ちょっと、待ってよ」

最後の力を振り絞って玄関に向けそう叫んだ私の声は殆ど掠れていて、恐らく外にいる相手に届く前に消え入ってしまったに違いない。

「はぁ、はぁっ、」

呼吸が荒くなってきて、頭がどうしようもないくらいに重くて、とうとう重力に負けたかのように冷たい床に体を横たえるようにして寝転がった。

先程と同じように、どこまでも白の広がるだだっ広い天井を見上げていると、唐突に目の奥がツンと痛くなった。

なんで、私ってこんなに弱いのだろう。

悔しくって情けなくって、涙が頬を伝って体中が熱くなるのを感じた。

助けて……

そう願ったその時だった。

力無く、揺れる焦点で見つめていた廊下の奥に、微かに人の姿を見た。

マネージャーが異変に気付き、合鍵を使ってくれたのだろうか。

必死に保っていた意識が安堵で急激に揺らぐのを感じる。




「てっちゃん」

突如、私の耳に届いた揺れる鈴の音のように可愛らしい声。

いつか、こんなおもちゃみたいな声が嫌だって結構真面目に凹んでた時期があった気がする、あの子の声。

「なんで、」

ねるの匂い、する。

「ねる?どうしてここに、」

思考が完全に停止した私の小学生のような稚拙な問いに答えるかのように、彼女はぎゅうと力強く抱きしめてくれた。

「よう頑張ったね。凄かった、本当に」

「うぅっ、」

息がしづらく、しゃくり上げるように嗚咽が止まらない。

そんな私を落ち着かせるかのような彼女のぽん、ぽん、と心地好いリズムを背中に感じる。

「てっちゃんは変わらんね」

そう言ってふふ、と微笑む彼女がなんだかとても懐かしくて温かくて、必死に保ち続けていた意識が緩々と抜けていく。

「良うなるまで一緒におってあげる」

その言葉に頷いた所で流れ出る涙もそのままに、緩やかに私の記憶が途切れた。













てちねる2020イズdokoですか?てちねる信者の私、生きていけない、、、。