「ふわぁぁ、疲れた」
私、菅井友香は他のメンバーが居ないのをいいことに、お嬢様キャラには相応しくない声を出して楽屋のソファーに腰掛けた。
一番早くインタビューが終わり、私は一足先に楽屋に戻ってきたのだ。
思わぬところで、すきま時間が出来た。
さて、何かしようか。
そういえば、土生ちゃんにオススメされた漫画が読み途中だったな。
どこに入れたっけ、と自分のバッグを漁っていると、ふと私の耳にすぅすぅと穏やかな寝息が聞こえてきた。
ん?
「…てち?」
楽屋の中央に設置されている大きな机の端っこで、教科書やノートを開いた上に突っ伏して熟睡している彼女に気づいた。
彼女なりの配慮なのか、狭いスペースで小さくなって寝ているために全く分からなかった。
…カシャリ
いつもより幼く見える彼女が可愛くて、無意識に写真を撮ってしまった。
普段滅多に気を抜くことがない平手だから、余計に愛おしさが増してしまう。
欅のグループLINEに送信しちゃおっと。
…あれ、勉強してたのかな。
覗き込むと、どうやら宿題の途中だったらしい。
ああ、因数分解とか懐かしい…
そういえばこの子、まだ高校生だったこと忘れてた。
欅坂に入った時は中二だったよなぁ、と謎の感慨に耽っていると、
「んー」
突然ガバッと起き上がったてちに驚いて、私は思わず身を仰け反らせた。
「寝ちゃってた、」
こしこしと目を擦って辺りを見回す彼女。
「あ、ゆっかー」
どうやら私に気づいたようだ。
しかしまだ寝ぼけているのか、これまた彼女にしては珍しいぼんやりとした声だ。
「てち、久しぶり。勉強してたの?」
「あー、まあね。」
しかし彼女は勉強を再開する事はなく、慌ただしく勉強道具をカバンの中に仕舞いだした。
「あ、ごめん私邪魔だった?」
「もういいの」
そう視線を泳がせて言う彼女。
「てちも今日インタビュー受けるんだっけ?」
「いや、私は無い」
珍しく歯切れの悪い彼女にどうしたのだろうか、と私は首を傾げた。
すると、もじもじしていた彼女がゆっくりと口を開き始めた。
「…なっちゃって」
「ん?」
「みんなに会いたくなっちゃって」
「ええー、ふふ」
思い出した。
てちって、たまにすごくデレるのだ。
私はにやけが止まらず、両手で顔を覆い隠した。
「なに、」
「嬉しい」
「別にゆっかーに会いにきたわけじゃないよ」
「またまたー、本当は寂しかったんでしょう?」
そう言って彼女の頭を優しく撫でた。
ブンブンと首を振って私の手を振り落とそうとするのもまた、可愛すぎる。
バターン!!
「ねえ!平手いんの?」
勢いよくドアを開けたのは、平手を赤ちゃんと呼び、妹のように可愛がっているふーちゃん。
「平手、おねむなの?」
そう言って差し出したケータイには私が先程激写したてちの写真がドアップで映し出されていた。
「ちょ、ゆっかーどういうこと」
てちの声が少しだけ低くなったのを感じて私は笑って誤魔化した。
「ごめんごめん、可愛くて思わず」
「はあ?何言ってんのほんと」
全然可愛くないよ!!と真っ赤になった顔で言い返す彼女は相変わらず可愛くて、全く説得力が無い。
「あーかわいい末っ子ちゃん。私の膝で寝まちゅか?」
ふーちゃんは本気なのか冗談なのか分からない程デレデレになっている。
「もう意味わかんない」
ぷい、と彼女は顔を背けてしまった。
しかし耳まで真っ赤になっている様子を見る限り、どうやら怒っているのではなくただただ照れているだけのようだ。
「ごめんてー!でもこんなん見たら誰だってうおおおってなるよ。ねえ、ゆっかー?」
「あははは、」
「ちょっと!苦笑いしないでよ、私が変態みたいじゃん。」
「でもふーちゃんは変態だよね」
「こんのクソガキ…」
その時、かちゃりとドアが静かに開いた。
「あ、てちー!」
「てち、久しぶりだねえ」
「あ、むーちゃん、おぜ!」
てちは先程まで殺気を放っていたとは思えない程可愛らしい微笑みを返している。
そしてインタビューが終わったのか、メンバーが次々と楽屋に戻ってくる。
バタ、バタ、バタ…
「え、なに。この音怖くない?」
廊下から規則正しく不気味な音が鳴り響く。
突然ギュッと服の端を握られるのを感じて、恐る恐る振り向くと、てちが小刻みに震えながら私の後ろに隠れていた。
あ、思い出した。
てちは相当の怖がりだったことも。
…ガチャン!
ドアが、開いた。
「てち可愛いかよ!最高!愛してる!!!!」
「なんだオダかよー、」
ヒラヒラと手を振ってふーちゃんが呆れたように言った。
「オダうるさい!」
オダナナに後ろからホールドされ、揉みくちゃにされているてちが息も絶え絶えに叫んだ。
そして数分後てちにしばかれるとは露知らず、私は今日も平和な欅坂46に思わず頬が緩んでいた。
了
しばらく無更新ですみません…
原稿を一枚無くして萎えてたのと新生活の準備に追われてました(T-T)
あとてちの幼児化とか興味ありますかね、流行ってる(?)らしいので書いてみたいんですけど幼児言葉とか性に合わないというか書いてるうちに恥ずかしくなっちゃって困ってます (´ー`)