アイスさんから
てちと理佐で、てちが倒れて理佐が看病する話が読みたいです。

看病要素少なめです、すみません(T-T)


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「てち、寒いの?」

「んー、ちょっとね」

「まだもう少し時間かかるらしいよ、これ使う?」

先程から両手で身体を摩っている彼女に、私は自分の毛布を手渡した。

「ごめんね」

「そういう時はありがとうだから」

「はは、ありがとう」

「どういたしまして」

毛布をぐるぐる巻きにして羽織る彼女はなんだか小動物のようで、微笑ましい。

その姿に思わず口元が緩んだ。

「なぁに?」

「いや、かわうそに見えた」

「意味分かんない〜」

なんだかいつもよりも語尾が柔らかい彼女が愛おしく感じる。

ガンガンと暖房を効かしているこの部屋で寒気を感じるということは、彼女は風邪気味なのだろうか。

少しだけ心配する気持ちを残して、私はスマホに目を戻した。







ガタンッ、


突如楽屋内に響き渡った大きな音に驚いて私はスマホから顔を上げた。

「てち?」

彼女は椅子から滑り落ちるようにして床に身体を打ち付け、手で口元を覆い苦しそうにその場で蹲った。


「え、ちょっと」

私は頭の中が真っ白になった。

「どうした?」

斜め向かい側の席に座る尾関がイヤホンを耳から外して私に尋ねた。

「おぜどうしよう、てちが!」

「え?」

状況がよく分からない、という表情でパタパタと私たちに近づくが、てちの姿を見た瞬間すぐさま彼女の異変に気付いてくれた。

「てち!!」

必死に彼女の名を呼びながらパシパシと頬を叩いた。

しかし物凄い冷や汗の量や、こちらの呼びかけに反応せず、眉を顰めて苦しそうにしている様子を見て危険だと判断したようだ。

「私、マネージャー呼んでくるから理佐はてちの側にいてあげて」

「うん、お願い」

「すぐ戻ってくるから!」

そういって尾関は部屋を飛び出した。

息をゼエゼエとさせて苦しそうに肩で息をする彼女に、私は「大丈夫だから、」と根拠のない言葉をかけることしか出来なかった。








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うん、インフルエンザですね。」

「そう…ですか」

あの後、てちは慌てて駆けつけたマネージャーに抱きかかえられ、心配で同行したいとせがんだ私含め三人で病院へと駆け込んだのだが、急遽かかった急ぎの電話に出るために、マネージャーは一旦外に出てしまった。

その直後に私たちは呼び出されてしまい、何故か私がてちの診断結果を聞いている形になったのだった。


「点滴だけ打っておきましょうか」

平手さんも忙しいでしょうし、早く治したいですよね、と機転を利かしてくれた医師がスラスラとカルテに記入していった。

しかしその時だった。

「…嫌」

診療台に横になっている彼女は必死になって首を横に振った。

「え?」

「普通に、薬、ください」

「いや、でも」

そう言って不思議そうな表情を浮かべる医師に彼女は必死に懇願した。

「本当に、大丈夫、なので」

「まあ、本人がそう言うなら…」

何故だか分からない、と言うように頭の上にはてなを浮かべながらカルテに記入し直しているところを見て、私はふと思い出した。

「あれ、そういえばみんなで注射打たなかったっけ?」

集団感染を防ぐ為、年末に欅のメンバー全員で病院に予防接種を受けに行ったのだ。

しかし今考えると、てちって…いなかった気がする。


「…逃げた」

「はあ?」

「だってさ、身体に針打つなんて、そんなの、」

体調不良で涙脆くなっているのか、彼女の瞳からぽろぽろ涙が零れ落ちた。

「泣かないの。」

「だって、痛い、」

なだめても、彼女の瞳がじわじわと潤んでいった。

正直、こんなに涙脆い彼女を見たのは初めてかもしれない。

「うん、分かった分かった。針なんて無いよ。…あの、これで診察は以上ですか?」

「あ、そうだね。お大事に」

「ありがとうございました。」

呆然とする医師を残して私たちは診療室を後にした。



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「理佐、ありがとうね。降ろすのいつもの所でいい?」

「はい、」

…ん?

ぎゅっと服の袖が掴まれた感覚。

「理佐ぁ」

滅多にない程寂しそうな表情を浮かべる彼女。

え、私甘えられてる?あの平手に?

居ても立っても居られなかった。

「すみません、私もてちと一緒に降ります。マネージャーの代わりに看病させて下さい」

「え、でも、」

「私明日オフですし、土日も仕事休みなので」

「…そう?じゃあ何かあったらすぐ私に連絡して」

少しだけ悩むそぶりを見せたが、うんと頷いて言った。

「はい、任せてください」

「まあ、理佐なら大丈夫か」

マネージャーがふー、と肩の力を抜いたのが見えた。


「あ、そうだ」

私は彼女の汗で額に張り付いた髪を払い、病院で貰った冷えピタを慎重に貼った。

「気持ちいい?」

彼女は力無くゆるゆると頷く。

ぎゅうと掴まれた手がゆるゆると緩み、苦しそうな表情が少しだけ和らいだ気がした。

「あ、おぜに連絡しなきゃ」

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[ありがとうね、おぜ]

ピコン。

すぐに返信が帰ってきた。

[甘やかせてあげてね]

おぜには全てお見通しのようだ。

[任せて]


それだけ打ってスマホを鞄に仕舞った。

今日は存分に甘やかせてあげられる。

再び意識を失うように眠る彼女を抱き寄せて、私は頭の中で看病する計画を立てていった。