「…何日くらい寝られてないの?」

「分かんない。いつも夜中に目が醒めちゃうから」

「なんでもっと早くねるのところに来てくれないのよ」

「いや、だってそれは、ねるが忙しそうで迷惑かけられないなって、」

やはり、会えない期間が長いとお互いの気持ちが曖昧になってしまうのだろうか、全く気づいてあげられかった。

「いやいや、それはお互い様だよ。むしろてちこの方がバタバタしてたと思うよ」

「そうかな。」

「そうだよ。いつでも頼って。」

こくり、と頷く彼女を見て、なんだかホッとした私は、たわいもない話をして彼女を落ち着かせることにした。

「ばっくれたいなあ、明日のレッスン。」

「ねるっぽくないね」

「そう?私だってそういう時あるよ」

「バレたらふーちゃんにシメられるけどね」

いたずらっ子のような笑みを浮かべて彼女は言った。

「ふふ、確かに」

意外と時間には厳しいふーちゃんの怒った顔が頭に浮かんでついつい可笑しくなってしまった。

「人の体温って落ち着くねえ」

二人の距離を埋めるように近づいて私は言った。

「ん、」

段々と、返事が曖昧になっていく。

「てち」

「ん?」

「明日、朝ごはん一緒に食べようか。」

「ん」

「私がねるねるスペシャル作ってあげるね」

長崎の郷土料理に自分なりの名前をつけて自慢げに言ったのだが、返事がない。

白けた、か。

とほほ。ともう一度彼女に向き合って念押しすることにする。

「てち、ねるねるスペシャル…」

あ。寝てる。

中々会えない期間が続いていて、彼女が少しだけ遠くに行ってしまった気がしていた。

でも、寝顔は相変わらず幼いな。

少しだけ開いている口がとても愛おしい。

ぽん、ぽん、と赤ちゃんをあやすように彼女の身体を毛布の上から撫でる。

寝顔を眺めていて、私は少しでも彼女の不安を消せる存在になりたい、そう思った。

よし、まずは明日完璧なねるねるスペシャルをこの子に振舞わなきゃな。

明日に備えて、私も寝ることにした。




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「ひーらーてー」

「んんん、今行く!」

ふーちゃんとてちの声がする。

…ふーちゃん?

「ねる、やばい起きて」

分かってるわ!と一言スマホに怒鳴った後、ブチリと通話終了ボタンを押したてちが言った。

部屋の時計を見やると、集合時間から1時間経った時間が表示されていた。

二人揃って完全に遅刻、だ。

「ああ、ねるねるスペシャルが…」

すると、ふと歯を磨いていた手を止めて彼女がこちらを見ていることに気づいた。

「ん?どうしたの?」

「 明日さ、作ってよ。朝ごはん。」

「え、いいの?」

「ねるが良ければ、」

「本当に?じゃあ明日ね!」

嬉しい嬉しい嬉しい。

私は小さくガッツポーズをした。

「ねる、急いで!!」

「う、うん!」



この後、二人してこっ酷くふーちゃんに叱られている様子がしょげてるたぬきとカワウソにしか見えないとメンバー内で盛り上がったとか。