ふわふわと、暖かな空間に私は漂っていた。
しかし、突然全身に重力がかかって、辺りが真っ暗になった。
お腹辺りがなんだか重くて、頭は締め付けられているような感覚。
なんだかあまりいい気分ではない。
ここまで考えて私は目を瞑っているのだということに気づき、しぱしぱと瞬きを繰り返した。
「ん、」
重力の正体はこれか。
頭には幾十にも巻かれた包帯。
お腹辺りに突っ伏して眠っている彼女。
ふと、彼女が無理な体勢をとっていることに気づいた。
「友梨奈、起きて。点滴取れちゃうよ」
ゆさゆさと彼女を揺さぶる。
むくりと起き上がった彼女は、目にこぼれ落ちるほどの涙を浮かべていた。
「飛鳥、良かった…三日も眠ってたんだよ?助けてくれて本当にありがとう。」
鉄パイプで殴られたんだもんな、私。
なんだか現実味が無くて他人事のように感じる。
「心配かけてごめんね。友梨奈が無事で良かった…って聞いてる?」
「うん、全部聞いてるよ。本当に良かっ、」
先程からどこかぼんやりとしていた彼女は、伏せがちだった瞳がぱちりと閉じられそのままぽふ、と私の布団に倒れこんだ。
「え、どういうこと、友梨奈??すみません、誰か!誰か!!」
ナースコールの存在すら忘れるほどに焦っている私は大声で助けを求めた。
すぐにパタパタと、数人の看護師さんが駆けつけてくれた。
目覚めたばかりなのに精一杯叫んだせいか、なんだか頭がぼーっとする。
そのまま全身の力が抜けるようにして私も意識を手放した。