「まじか、」

そう呟いて彼女は頭を抱えた。

「もしかして飛鳥、ずっと布団で寝てたの?ごめん、私がベッド占領してたばっかりに。今日から私が布団で寝るよ」

そう言ってベッドから這い出ようとする彼女を私は、グイグイと強引に押し戻した。

「だーめ。数日前まで入院してた人間なんだから、ちゃんとしたベッドで寝ないと。」

「入院って、二日だけだし。ねえ、ほんと申し訳ないから、」

本当に彼女は、どこまでお人好しなんだろうか。

ふと、私はあることを思いついた。

「じゃあ、これで」

そう言って私は彼女のベッドへと潜り込む。

「え、どゆこと?」

困惑する彼女に、私は言った。

「一緒に寝ようよ。それならいいでしょ?」

むぅ、と顔を歪めていた彼女だが私の考えに賛成してくれたのかキラキラとした目で頷いた。

「いいね、楽しそう」

「楽しそうって、寝るだけだよ」

「寝るだけでも飛鳥となら楽しいよ」

そう言って私に抱きついてきた彼女だったが、自分の言ったことの重大さに気づいたのかそろそろと私から離れていく。

「友梨奈ちゃん!私もだよ!」

ここは合わせてあげようじゃないか。

私は普段ではあり得ないハイテンションで友梨奈を抱きしめ返した。

「… ね、暑い」

突然ツンデレを発動させた彼女に私は我に返る。

「私も」

そして何事も無かったかのように、私たちはそれなりの距離をとって同じベッドに横になった。

「ねえ、飛鳥。明日休みなの?」

少し間を開けて、もう眠ってしまったと思っていた友梨奈が口を開いた。

「うん、休みだよ」

「私も休み。何かしようよ。」

「そうだね、お菓子でも作る?」

「作りたい!」

「じゃあ決まりだ。」

んふふ、と幸せそうに笑う彼女が本当に愛おしい。

ああ。こんな日が、こんなにゆったりと幸せな日々が。

「ずっと、続けばいいのになぁ。」

私の声が、暗闇に溶けていく。

ふと、彼女を見やる。

テーブルランプに淡く照らされた彼女は、すぴすぴと気持ちよさそうに眠っていた。

最初はあんなに人見知りだったのに、懐くのは早いんだな。

彼女の顔にかかっている髪の毛を指で払って優しく頬を撫でる。

この子のおかげで、最近は毎日が楽しい。

明日をこんなに待ち望む自分に、なんだか変な気持ちになった。

「なに作ろうかな、明日。」

甘いのが良いかな。思い切ってケーキとか?

そんなことを考えながら、私も暖かな眠りについた。