生きてて良かった。そんな風に思える日は来るから今は生きなさい。嘘である。何かいい事があってその時に自分がそう思うのは構わないが、他人を励ます時に使うのは慎重に判断して頂きたい。


何故そこまで言い切れるのか。この言い回しは過去歩んできた人生の良い事も悪い事も全て参照するからである。現在うだつの上がらない状況下にいる人間がそう思える日が来ると辛い日々を耐えたところで、未来がどうなるかわからない。この言葉は今までの苦労全てに勝る快楽が得られるという期待ばかりを増長させ、いざ小さな幸せが訪れたところでそれに気付けなくなる。これはありもしない未来を生きるが故におこる不幸である。いざ幸福に触れる機会があったとしても過去の記憶を持ち出してしまえば喜びも減少してしまうだろう。存在するのは今だけである。いい事も悪い事もその場限りのモノなのだからその時々で楽しんだり悲しんだりすればいい。わざわざ人生が報われる程の幸福を期待するだけ無駄である。仮にあったとして時が経てば色褪せてちょとした思い出と同じになるのがオチだ。生きてて良かったと思える日を期待すればする程にそんな時が遠ざかるばかりだ。


生きてて良かった。そう思える日は来ないけれど、ちょっといい事はそこら中に落ちている。今はそれを拾う事だけを考えてみるのはどうだろう?後になって拾い集めた小さな幸福を見返してどう思うかは貴方の勝手だ。