この年は創立80周年を迎えて、9月に記念式典が10月には大運動会が催された。初舞台生の80期生には月組トップの霧矢大夢と花組娘役トップ千ほさちがいた。その他男役には二番手退団で話題となった彩吹真央の他、朝澄けい、久遠摩耶、鳴海じゅん、最近毎年春になるとTVで音楽学校受験生の動向が放送されて話題となるスクール経営の初嶺まよ(麿代)等、娘役には久路あかり、愛田芽久、水沢葉月、そして現在歌劇団の振付家として活躍している百花沙里などがいた。

 

 1~2月月組「風と共に去りぬ」は天海祐希バトラーに対して、麻乃佳世と真琴つばさがスカーレットⅠとⅡをWキャストで演じた。私見になるが、真琴Ⅰに麻乃Ⅱが任に合っている気がした。2~3月星組「若き日の唄は忘れじ」は藤沢周平原作で、作・演出の大関弘昌最後の作品となったがその後何度か再演されている。

 

 4~5月花組「ブラック・ジャック 危険な賭け/火の鳥」は手塚治虫記念館開館記念公演として、芝居とショー両方とも手塚作品を原作とした作品となった。「BJ」については、主人公の顔の継ぎ接ぎを再現した安寿のメイクも話題だったが、1977年「風共」初演当時にバトラーの口髭がトップスターとして相応しいか否かで議論となった事を思うと、隔世の感を持ったものだった。この後7月の花組東京公演に丁度重なるスケジュールで、安寿主演でのロンドン公演が催された。そのため東京はロンドン公演参加メンバーが抜けて真矢みき主演で大幅な配役変更の上演となったが、最後の3日間のみ帰国直後の安寿が入っての役替わり公演が行われた。

 

 5~6月雪組「風と共去りぬ」は一路真輝主演のスカーレット編となった。一路は過去新公でバトラーとアシュレー、本公演でスカーレットⅠとⅡを演じており、これでメラニー以外の主要配役コンプリートとなった。バトラーは大劇場では花月星の各組二番手だった真矢みき、久世星佳、麻路さきと雪組轟悠が、東京では高嶺ふぶきと轟がバトラーとアシュレーのWキャストとなった。また3月「ブルボンの封印」東京公演で紫ともが退団していたために、トップ娘役は不在となっていた。尚、スカーレット編は1978年雪組汀夏子主演と花組安奈淳主演以来であり、これ以降も上演されていない。個人的にはやはりスカーレットが物語の本来の主役であり、映画に近いスカーレット編の方が好みではある。この当時雪組新公は和央ようかが主演していたが、和央がロンドン公演で抜けたこともあってか、花總まりが新公スカーレット役に抜擢された。

 

 7~8月月組「エールの残照/TAKARAZUKA・オーレ」の「オーレ」は80周年記念レビューとなった。8~9月星組「カサノバ・夢のかたみ/ラ・カンタータ」は紫苑ゆうの退団公演で、「カサノバ」は小池修一郎作・演出。“巨匠”となった今と違って、90年代は未だ劇団の中堅演出家として二本立ての前物の芝居を上演していた時代だった。「カンタータ」はロマンチック・レビュー第8弾。10~11月花組「冬の嵐、ペテルスブルグに死す」の新公ヒロインに抜擢された当時研3の千紘れいかが、この頃から注目を集めるようになった。11~12月雪組「雪之丞変化/サジタリウス」は花總まりの娘役トップ大劇場披露公演で、「雪之丞」は7代目尾上菊五郎が演出を担当し「サジタリウス」は演出家中村暁の初のショー作品。

 

 バウホールでは1月につい最近再演されて話題となった、「二人だけの戦場」が雪組一路真輝と花總まりのコンビで上演され、その後2月に東京日本青年館で上演されたが、この時点では紫ともは大劇場公演は終わっていたが東京公演は3月だったので在団中。10月の名古屋公演が改めての一路・花總新コンビ披露公演となった。2月月組「たけくらべ」が姿月あさと主演で上演されたが、5~6月東京と名古屋で上演された際は花組愛華みれ主演での上演となった。

 

 1994年は創立80周年関連の記念公演や行事、手塚漫画原作作品の上演、ロンドン公演、花總まり新人公演主演を含めた「風と共に去りぬ」バトー編とスカーレット編上演、紫苑ゆうと紫とも退団に一路・花總新コンビ誕生と話題豊富な1年となった。