我は語ろう、今は失われし歴史(とき)を。

我は謳おう、その時空(とき)を生きた者たちのために……。

 

“竜”は語る――。

 

そは(いにしえ)にして先の代の、先の代にして(いにしえ)の。

近くて遠き、遠くて近き――巡る廻る螺旋の叙事詩(きせき)

忘れられし、されどそは誰もが知りし物語(きろく)

次元(そら)の光に隠されて、時空(うみ)の闇に沈められし、かの者たちの記憶(いのり)なり――。

 

 

これより遥かなる先の代に、“廻輪(エリン)”と“八多空主(ヤタカラス)”という種族が在った。

かの者たちは汝らの宇宙(せかい)を守るため、全ての悲劇をくい止めるため、数多の歴史(とき)をくり返した。

廻輪(エリン)”は己の生命(いのち)と引き換えに“八多空主(ヤタカラス)”を送り、“八多空主(ヤタカラス)”は己の生命(いのち)を懸けて次元と時空の“壁”を越えた。

“壁”を越えた“八多空主(ヤタカラス)”は瀕死の重傷を負いながらも別宇宙(せかい)にたどり着き――、

“壁”を越えられなかった“八多空主(ヤタカラス)”は転生すらかなわぬほど粉々に砕け散り、新たな宇宙(せかい)生命(いのち)の礎となった……。

 

かの者たちは知っていた。

歴史(とき)をくり返すことによって、いずれ己の存在が汝らの宇宙(せかい)より完全に消滅することを。

それは汝らの宇宙(せかい)を守るため、全ての悲劇をくい止めるためには、(ほうそく)が異なる全ての別宇宙(せかい)に共通する(ほうそく)―“環”―を作らねばならなかった。

その材料はかの者たち―“廻輪(エリン)”の“真名”である。

“真名”を失えば汝らの宇宙(せかい)には存在することはかなわない。

“真名”を失えば“穢れもの”となり、“大いなる者”によって滅却される。

(アカシックレコード)”に“真名”が在れば復活も望めるが、“(アカシックレコード)”の化身であるかの者たち―“廻輪(エリン)”にはそれはかなわない。

それでも、かの者たちは数多の歴史(とき)をくり返した。

廻輪(エリン)”は“希望の種(アーシャ)”を生み、“八多空主(ヤタカラス)”は“希望の種(アーシャ)”を運んだ。

 

そして一つの”奇跡(クリス)“が起きた。

数多の歴史(とき)をくり返した“八多空主(ヤタカラス)”の軌跡が”奇跡(クリス)“を生んだ。

八多空主(ヤタカラス)”の一羽が三千世界を越え、“九番目の理主(リシュ)”のもとにたどり着いた。

(ほうそく)を生む創造主―“理主(リシュ)”は、己の分身(いでんし)を“八多空主(ヤタカラス)”に与え汝らの宇宙(せかい)に帰した。

 

のちに“九番目の理主(リシュ)” の分身(いでんし)より生まれた“小さき神”は“九理主(クリシュ)”と呼ばれ――、

廻輪(エリン)”と“八多空主(ヤタカラス)”の先祖であり子孫でもある“天翔人(古代クリス)”や“源の民(クリス)”の始祖(ルーツ)となる。

 

 

【タカアマハラ真話/クリスターシァ・クリスタージュ(かの者に祝福を)〜九理主(クリシュ)(一部抜粋)〜】


*語り:ぎんの龍

*翻訳:天常立樹あまのとこだち

代筆:髙橋千穂