【タカアマハラ幻想】

「草の民の伝え語り」より。

“竜”は語るーー。

そは古(いにしえ)にして先の代のーー
先の代にして古(いにしえ)のーー
近きて遠き、遠きて近き、巡る廻る螺旋の叙事詩(うた)。
失われし、されど、そは誰もが知りし物語。
空間(そら)の光に目が眩み、時間(とき)の闇に隠されて、誰もが忘れし記憶なりーー。


気がつくと、ソレはそこに存在する、ただ一つの存在だった。

ある日気がつくと、いつの間にか、そばに一つの点のような小さな「光」が存在していた。
いつから在ったのか、ソレには分からなかったが、自分以外の初めての存在に、ソレは初めて興味を示した。
キラキラする「光」を、ソレは飽きることなく見続けていた。

ある日、ソレは「光」に触れてみたくなった。
だが触れようとした途端、それまでキラキラしていた「光」が瞬く間に暗くなり、消えそうになった。
ソレは慌てて離れると、「光」はまたキラキラと明るさを取り戻した。

その時、初めてソレは「自分」がどういう存在であるかということを認識した。
そして「光」が、どういう存在であるかということも。

「自分」が何であるか理解したソレは、己れのすべきことをした。

ただ一言、

「…………。」

そうして、今の宇宙が生まれたーー。

語り:吟の竜
翻訳:アマノトコダチ

2017.10.30