tree10. 頭痛③ 頭痛の治療法
前回は頭痛の対策について紹介しましたが、今回は薬物を含めた頭痛の治療法について紹介します。
<食事療法>
「MBT(Molecule-based therapy)」という言葉があります。これは、鳥取大学臨床検査医学助教授・下村登規夫先生が提唱する「主に食生活から頭痛改善を図る方法」のことです。
直訳すると、「分子に基づいた治療法」ですね。
頭痛の原因を分子レベルから捉えようという考え方で、その人の病歴や診察の記録、生活習慣を参考に、食事を含めた生活指導や投薬を行う治療概念です。
不足していたり、機能が低下しているときに頭痛が引き起こされる分子を「標的分子・システム」と呼び、標的分子・システムを補ったり除去するものを「攻撃物質・分子」と呼びます。この攻撃物質・分子は主に食品から摂取します。
「標的分子・システム」はセロトニン、交感神経系、ミトコンドリア、マグネシウム、ラジカルスカベンジャー(活性酸素の毒消しをする物質)の5つです。
「攻撃物質・分子」はビタミンC・E・A・B群、マグネシウム、ラジカルスカベンジャー、トリプトファン(アミノ酸の一種で神経伝達物質・セロトニンをつくる材料)があげられます。
ま、つまり「攻撃物質・分子」を摂取すればいいわけで、実際には以下のものを食べるとよい、といわれています。
| 攻撃物質・分子 | 含有する食品群 |
| ビタミンC | いちご、じゃがいも、緑茶、みかん、緑黄色野菜 |
| ビタミンE | 大豆、うなぎ、落花生 |
| ビタミンA | にんじん、ほうれん草、バター、チーズ、牛乳、卵黄 |
| ビタミンB群 | 豚肉、大豆、うなぎ、ゴマ、卵、緑黄色野菜 |
| マグネシウム | ほうれん草、柿、大豆製品、魚介類 |
| トリプトファン | 大豆製品、卵黄、牛乳、ゴマ |
<ハーブ療法>
以下のハーブが、頭痛に効果があるといわれています。
| フィーバーフュー (ナツシロキク) |
カナダ・イギリス両政府により「片頭痛に有効」と認定されている。 |
| ペパーミント | 消毒の効果のほか、消化・強壮にも。血管収縮作用があるため、片頭痛に。 |
| イチョウ | イチョウ抽出物が片頭痛に有効であるといわれている。 |
| ラベンダー | 殺菌・鎮静・鎮痛作用があり、頭痛をやわらげる。 |
| ローズマリー | 生葉や乾燥葉が、殺菌や酸化防止、消化促進剤として用いられている。葉からとったお茶は鎮痛薬に。 |
| シソ | 殺菌・解毒作用がある。ミントとシソを合わせたお茶は、頭痛をやわらげる。 |
| カモミール | 鎮静、鎮痛、発汗作用があり、頭痛をやわらげる。 |
<薬物療法>
①緊張型頭痛
NSAIDs(非ステロイド抗炎症薬)の使用が最も勧められます。ただし、胃腸障害や腎障害などの副作用があるので注意が必要です。また、NSAIDsの慢性的使用によって、さらに頭痛がひどくなることがあります(薬物乱用頭痛)。カフェインの併用は効果があるといわれていますが、胃腸の弱い方にはあまりおすすめできません。
予防薬としては、抗うつ薬(とくに三環系抗うつ薬)がおすすめですが、口腔内乾燥や眠気に注意が必要です。
鎮痛薬、NSAIDs、ベンゾジアゼピン系薬剤、筋弛緩剤の併用も効果があるといわれていますが、根拠となる基礎データはないようです。
②片頭痛
軽症例では、NSAIDsが勧められますが、中等度以上の片頭痛発作では、トリプタン系の経口薬がおすすめです。これは頭痛出現時に内服してください。予防効果はありません。また、この薬は狭心症や心筋梗塞、脳血管障害などの血管障害の既往がないことが前提です。
エルゴタミン製剤は、トリプタン無効例や、片頭痛発作の初期に用いれば有効な薬剤です。
メトクロプラミドなどの制吐薬は、片頭痛の随伴症状である悪心・嘔吐には効果があります。制吐薬は片頭痛急性期治療において積極的に併用されます。特にNSAIDs、エルゴタミンの併用薬として有用性があります。病院や救急室では、スマトリプタンの皮下注射が使用されます。
妊婦さんに薬を投与する場合には、アセトアミノフェンが比較的危険が少ないといわれています。
片頭痛予防薬としては、カルシウム拮抗薬、β遮断薬、エルゴタミン、抗てんかん薬、抗うつ薬、NSAIDsが使用されます。予防薬の第1選択は、塩酸ロメリジンがすすめられています。
③群発頭痛
トリプタン系薬剤は、外国では群発頭痛の特効薬としてすでに定着しています。スマトリプタンでは6mg皮下投与が極めて有効とされています。日本で認可されたのは、1アンプル3mgの製剤です。
確固としたデータはないのですが、予防薬としてはカルシウム拮抗薬(とくにベラパミル)やエルゴタミンがよいとされています。
薬物療法は、ちょっと専門的なのでわかりにくいと思いますが。
ま、要するに、片頭痛や群発頭痛の場合は、トリプタン系が特効薬で、緊張型頭痛の場合はNSAIDsがよく使われる、ということです。
「小児の頭痛」
最後に、小児の頭痛について紹介します。
某新聞で、小児の頭痛がしっかり診断されていない、との記事を読んだので、参考までに。
まず、吐くほどの頭痛を訴えたら、脳腫瘍を否定するために、必ず病院でCTをとってもらってください。
小児期の頭痛はほとんどが片頭痛ですが、脳腫瘍と症状がとても似ているので、注意が必要です。
小児の片頭痛の特徴としては、以下があげられます。
①発作的ともいえるほど急に始まる傾向があります。
②頭痛の持続は短く、5分や10分でおさまることもあります。
③片頭痛は急に良くなることもあり、「心因的なもの」と間違われやすいです。
④朝、片頭痛が出現する「登校拒否のためではないか」などと思われがちです。
⑤顔面蒼白・嘔吐も頭痛とともにしばしば見られます。
⑥ある時期、毎日のように出現することもあります。
⑦「目が見えない」などと視力障害を訴えたり、昏迷状態になったり、気がふれたような状態(錯乱状態)になることもあります。
⑧周期的嘔吐は、片頭痛と親戚だとされています。
片頭痛をお持ちの方なら、そのつらさはよくわかると思います。「登校拒否」や「仮病」など、子供の傷つく言葉はいわないようにしてあげてください。
片頭痛の治療薬としては、アセトアミノフェン製剤がいいです。
アスピリンは絶対に飲ませないでください。まれではありますが、ライ症候群という、3日以内に死亡する病気を引き起こすといわれています。
では、以上で頭痛シリーズを終了します。