tree.7 高脂血症④ コレステロールと死亡率 | Chrisのナルホド医療の木

tree.7 高脂血症④ コレステロールと死亡率

え~、今回は、コレステロールと死亡率の関係についてお話しようと思います。

ただ、この内容はよく読まないと、ちょっと混乱するかもしれません。

 現在、日本動脈硬化学会が打ち出している高脂血症ガイドラインは、以下のとおりです(デカイよ…)。

 

患者カテゴリー 脂質管理目標値(mg/dL) その他の冠危険因子の管理
  冠動脈
疾患*
LDL-C以外の
主要冠危険因子**
TC LDL-C HDL-C TG 高血圧 糖尿病 喫煙
A なし 0 <240 <160 ≧40 <150 高血圧学会の
ガイドライン
による
糖尿病学会の
ガイドライン
による
禁煙
B1 1 <220 <140
B2 2
B3 3 <200 <120
B4 4以上
C あり   <180 <100
TC:総コレステロール、LDL-C:LDLコレステロール、HDL-C:HDLコレステロール、TG:トリグリセリド

* 冠動脈疾患とは、確定診断された心筋梗塞、狭心症とする。
** LDL-C以外の主要冠危険因子
  加齢(男性≧45歳、女性≧55歳)、高血圧、糖尿病(耐糖能異常を含む)、喫煙、冠動脈疾患の家族歴、低HDL-C血症(<40 mg/dL)

 

ところが最近、コレステロールがやや高めのほうが長生きする、とのデータがでてきているのです。

これが新聞でも掲載され、これではコレステロールを下げたほうがいいのかどうか、みんな混乱してしまうだろうと思い、取り上げました。

 

ではまず、コレステロールが高めのほうがよい、とする意見から紹介しましょう。

 

上島らによる約1万人の全国調査…14年間の総死亡と総コレステロール値との関係をみたもので、5年以内の死亡は除外。男女とも、総コレステロール値240~260mg/dlの例での総死亡率がもっとも低い

内藤らによる約一万人の大阪府八尾市の調査…11年間の総死亡と総コレステロール値の関係をみたもの。2年以内の死亡は除外。男女合わせると、総コレステロール値240~280mg/dlの例での総死亡率がもっとも低い

大阪府守口市の約一万六千人の調査…5年間の総死亡と危険因子の関係をみたもの。総コレステロール240~260mg/dl群の死亡率がもっとも低い。

 

なんだかこういったデータをみると、コレステロールの基準(220mg/dl以下)は間違っているのか、と疑問に思う方も多いと思います。

コレステロールがやや高めのほうが死亡率の低い原因としては、

 

(1)日本人は、欧米と比べて虚血性心疾患の死亡率が少ないので、コレステロールを下げて心疾患を予防しても、死亡率との関わりが低い可能性がある。

(2)コレステロール値が下がると、脳梗塞は減少するが、脳出血は増加する。

(3)日本人の死因の1位はがんであり、特に消化器がんの死亡が多い。高コレステロール血症治療薬が、がん死を増やすという報告がある。

などがあります。

まとめると、欧米に比べて、心疾患よりも消化器がんによる死亡が多い日本では、高コレステロールに対する治療は、循環器死亡を減少させても、総死亡を上昇させる可能性がある、ということです。

 

では、これに対する反対意見を紹介します。

 

A.低コレステロールの死亡率増加は、肝疾患と脳出血が関与している。低コレステロールは、肝疾患の原因ではなく、結果によるものと考えられる。

 

B.脳出血は、脳梗塞に比べて発症がずっと少ない(約三分の一)ので、脳出血の増加が死亡率の増加の主な原因とは考えられない。

 

C.がんが日本人の死亡率の1位ではあるが、コレステロールを抑えることは、2位の心疾患と3位の脳卒中(中でも脳梗塞はダントツ)の減少につながる。

 

D.食生活の欧米化のすすむ日本は、これから欧米の死因に近づいていく、つまり虚血性心疾患が増加する可能性がある。

 

コレステロール値の細かい基準については、さらに詳細な調査が必要であり、これからも論争があることと思われます。

ですが、これまでのシリーズで述べた食生活や、運動・禁煙は、他の高血圧、糖尿病といった生活習慣病の予防にもつながります。

コレステロールを下げようとする生活習慣が、より健康的な生活をサポートするのは間違いありません。

 

では、以上で高脂肪血症のシリーズを終了します。