穐吉敏子(あきよしとしこ)の本を2冊読みました。

 

「ジャズと生きる」(1996)

 

日本ジャズ界のスーパーレジェンド、穐吉敏子。1929年満州生まれの91歳。

 

1996年発行ですから、この時、すでに67歳。それまでの生い立ちから現在までを本人が書いた「私の履歴書」のような本です。

本の半分を過ぎてやっと1956年(私の生まれた年!)、アメリカに渡ります。

 

満州生まれの世界で成功した音楽家と言えば、小澤征爾を連想しますが、彼は1935年生まれですから、6歳年下です。なんとなく、穐吉敏子も小澤征爾と同じようにアメリカに渡ってからはぐんぐん「人気急上昇」みたいなサクセスストーリーを想像していたのですが、決してそんなことはなかったのですね。

 

ある程度の地位が確立したのは、1970年代、ルー・タバキンとオーケストラを結成してから。

 

それまでは、アメリカで苦しみながら細々と「ジャズと生きて」きたというのが伝わります。

 

「エンドレス・ジャーニー」(2017)

 

こちらの本は2017年発行ですから、88歳。

 

「ジャズと生きる」は本人が幼少の「ピアノ少女」時代から時系列で書き綴っているので、その時の彼女の気持ちがストレートに出ていますが、この「エンドレス・ジャーニー」は彼女の作品や彼女の共演者について聞き書きで進められているので、かなりテイストが違います。

 

「自分でコントロールできないものは心配しない」「他人の評価は気にしない」と言っていますが、「ジャズと生きる」では、自分のコンサートの批評家の評を気にしていたことが窺えます。

 

やはり、地位を確立して自信を持って振り返る過去とその時のリアルタイムの気持ちでは違いますよね。

 

「ジャズ語」という言葉が何度も出てきます。文学者が日本語で書くか英語で書くかというのと同じように、「私は自分が表現したいことをジャズ語で書く」と言っています。それが、「ロング・イエロー・ロード」や「孤軍」になったのですね。

 

ただ、「ジャズ語がなくなりつつある」とも言っています。

 

「いわゆる私が考えているジャズというのは、ニューオーリンズからビバップの最後までで、ここでもう終わりだと思っています。」

「我々のビバップジャズっていうのは、いわゆる、ベース進行、5度-1度(ファイブ・ワン)とか、2度-5度-1度(トゥー・ファイブ・ワン)が4度で動くのが基本ですからね。いわゆるバッハが土台ですよね。たとえば、娘の満ちるが作る音楽は4度の進行ではなく横にいく音楽だから、ドビュッシーとか近代音楽のほうになっちゃうわけです。」

 

うーん。こうなると、もうわからない。「横にいく音楽」っていう表現が面白いけど、やっぱりよくわからない・・・

 

本日の名盤

穐吉敏子=ルー・タバキン ビッグ・バンド「Long Yellow Road」(1975)

01 Long Yellow Road
02 The First Night
03 Opus Number Zero
04 Quadrille, Anyone-
05 Children In The Temple Ground
06 Since Perry - Yet Another Tear

 

正直、若い頃は全然良いと思わなかった音楽です。サックスをやってオーケストラに入って初めて良さがわかるようになりました。