本のご紹介です。

 

青柳いづみこ「ドビュッシーとの散歩」(2012)

青柳いづみこのウェブサイトには「ピアニスト・文筆家 青柳いづみこ Official Website」とあります。

世界広しといえども、ピアニストと文筆家の二足のわらじをこうはっきり名乗る人は少ないのではないでしょうか。しかもそのレベルが半端じゃありません。「ピアニスト」のほうが先に書いてありますが、私は彼女のピアノはあまり聴いていなくて、もっぱら文筆業のほうのファンです。

 

今までにも何冊か読んでいます。

・「ピアニストが見たピアニスト」

・「ピアニストは指先で考える」

・「モノ書きピアニストはお尻が軽い」

・「ショパン・コンクール 最高峰の舞台を読み解く」

 

どれも、軽いタッチで、ユーモアたっぷりにピアニストならではの視点で書かれていて楽しい本ばかりです。

 

・「翼のはえた指 評伝安川加壽子」

 

これは彼女の師でもあるピアニスト安川加壽子の評伝で、作家としての冷静な表現の中にも師への敬愛の情が感じられるかなりの大作です。

 

さて、今日の本題です。

 

「ドビュッシーとの散歩」の紹介には目次が不可欠です。

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I
1. 亜麻色の髪の乙女
2. 沈める寺
3. ミンストレル
4. アナカプリの丘
5. 水の精―オンディーヌ
6. 西風の見たもの
7. 雪の上の足跡
8. パゴダ
9. スペインもの
10. デルフィの舞姫たち
II
11. 月の光
12. 雨の庭
13. 五本指のための
14. グラドス・アド・パルナッスム
15. 金色の魚
16. 妖精はよい踊り手
17. イギリス趣味
18. グラナダの夕
19. パスピエ
20. 野を渡る風
III
21. カノープ
22. コンクールの商品
23. ボヘミア風ダンス
24. 風変わりなラヴィーヌ将軍
25. 水の反映
26. しかも月は廃寺に落ちる
27. ロマンティックなワルツ
28. 喜びの島
29. 葉ずえを渡る鐘の音
30. アラベスク
IV
31. 音と香りは夕暮れの大気に漂う
32. 八本指のための
33. 帆
34. 月光の降りそそぐテラス
35. 対比音のための
36. 抽象画ふうに
37. イヴォンヌ・ルロールの肖像
38. ゴリウォーグのケークウォーク
39. スケッチブックから
40. 花火
 
エレジー ―あとがきにかえて
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ドビュッシーのことを書かせたらこの人の右に出る人はいないだろうというトリビア満載の本で、ただ読むだけならあっという間にスラスラ楽しく読めちゃうんですが、曲の題名になっているということは、その曲のことが書かれているわけです。

 
例えば、III-21「カノープ」
 
「全音音階の響きのなかで、嬰ハ音が何度もリピートされ、半音階的に動く。一オクターブ上がって、もう一度同じことをくり返す。」・・・という具合です。
 
「ああ、あそこのことね!」とわかる人はいいですが、そこまで聴き込んでいない(弾き込んでいない?)と、その部分を聴きたくなるわけです。
 
しかも、曲はいろいろな曲集からランダムに出てくるのでCDではとても大変。こういうときにPCに落としたMP3は便利ですね。一発で出てきます。
 
聴くにはこのアルバムがうってつけ! 
安川加壽子「ドビュッシーピアノ作品全集」
CDだと4枚になりますが、ドビュッシーのピアノ曲が網羅されていてしかも演奏は抜群!
 
こうやって、1曲ずつ読んでは聴き、読んでは聴き、をやっているとこの本はとても時間がかかってしまうのです。
しかし、この本の楽しみは倍増します。ぜひ、みなさんもお試しください。
(美術館でもこうやって隣で解説してくれる人がいたら名画をもっと楽しめるんだけど・・・)
 
青柳いづみこのもう一つの本業のピアニストの仕事のほうも紹介しましょう。

本日の名盤
青柳いづみこ「ロマンティック・ドビュッシー」(2010)
01 バラード
02 2つのアラベスク 第1番
03 2つのアラベスク 第2番
04 夢
05 マズルカ
06 ロマンティックなワルツ
07 ダンス
08 ピアノのために 1.前奏曲
09 ピアノのために 2.サラバンド
10 ピアノのために 3.トッカータ
11 ベルガマスク組曲 1.前奏曲
12 ベルガマスク組曲 2.メヌエット
13 ベルガマスク組曲 3.月の光
14 ベルガマスク組曲 4.パスピエ
15 夜想曲
 
やはり、この人に弾かせるならドビュッシーです!
 
そして、ジャケットが素敵。
 
ドビュッシーは一般に「印象派」と呼ばれていますが、モネやルノワールに代表される絵画の「印象派」のイメージとはちょっと違いますね。本人も「むしろ象徴主義に影響を受けた」と否定していますし、この本でも否定的ですね。
私は、もっと先の抽象派のほうが近い感じがします。そのイメージをこのジャケットはうまく表現している気がします。