【小説】開高健の開高健のブラジル釣り紀行「オーパ!」を今更ながら読みました。 | たみ散歩~いつでもどこでも働ける、フリーランスという生き方~

【小説】開高健の開高健のブラジル釣り紀行「オーパ!」を今更ながら読みました。

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1958(昭和33)年、「裸の王様」で芥川賞を受賞し、「日本三文オペラ」「流亡記」などの話題作で知られる開高健のブラジル釣り紀行「オーパ!」を今更ながら読みました。病院では移動文庫が毎週月曜日に本の貸し出しを行っていますので、前回こちらのブログで「裸の王様」を紹介した開高健さんの本を読みたくなったんです。



何かの事情があって野外へ出られない人、海外へいけない人、鳥獣虫魚の話の好きな人、人間や議論に絶望した人、雨の日の釣師……すべて書斎にいるときの私に似た人たちのために。──開高健は本書巻頭にそう書きました。南米の大河アマゾンの釣魚・冒険・文明論ノンフィクション。稀代の文章家の猛烈な表現力で記されたこの伝説の旅は、その驚き(オーパ!)の豊かさ、深さ、面白さで、また、その文明論の射程で、いまだ他の追随を許しません。追うのは巨大魚ピラルクー、肉食魚ピラニア、黄金のドラド、名魚トクナレ……。旅程はアマゾン河口の街・ベレン、冒険の基地・サンタレン、大湿原の入口・クイヤバ、砂漠の人工都市・ブラジリア……。その美、その食、その壮大。心躍るブラジル紀行が紹介されています。

 

感想


オーパ!何事であれ、ブラジルでは驚いたり感嘆したりするとき、「オーパ!」といいますが、本を捲るたびにその驚嘆の声を上げたくなるような怪物じみた大江(アマゾン)に挑むノンフィクションでした。

 

出典:Chaminé Produções

空と水があるきりで、甲板の右でも左でも岸が見えない青い空と黄いろい水の無辺際の膨張が広がるアマゾンの河口。そのたっぷりの水をたたえて悠々として流れるアマゾン水系に生息する巨大魚ピラルクーなどの怪魚の数々。そして永遠の形相のさなか、姿を形を変えて紹介される大味なインディオの食品群。本は写真付きで実に丁寧に体験記が紹介されていますので、非常に面白く開高健さんのブラジル紀行を読むことができます。

「川の虎」ことドラドを釣り揚げるシーンは圧巻の一言。

ルアーはウィード・ベッドのはしっこを、底を、深く、走る。閃きつつ、身ぶるいしつつ走る。これを二度、三度繰りかえした。すると水音がやみ、突然、ガクっと竿さきがひきこまれ、水が裂けて巨人が跳躍した。緑、金、黒、白、赤が水しぶきのなかで散乱しつつ輝く。魚が首をふるとルアーがふきとばされてポチャンと落下する。そこにべつのドラドが殺到して襲い掛かった。食いつく。ジャンプする。落ちる。食いつく。ジャンプする。落ちる。三、四匹のドラドが水面にとびだしてきて右に左に走り、金色の矢があちらこちらへ飛び交い、魚も人もうわずってまるでカツオ釣りのような狂騒になった。

 

出典:River Monsters

いつか雨の日に十九世紀末のイギリス人の釣師の書いたものを読んでいるうちに中国古諺を一つ教えられた。出典が書いてないので、どこから引用したものか、いまだにわからないでいる。しかし、それは男による、男のための、男の諺なのである。

一時間、幸せになりたかったら酒を飲みなさい。

三日間、幸せになりたかったら結婚しなさい。

八日間、幸せになりたかったら豚を殺して食べなさい。

永遠に、幸せになりたかった釣りを覚えなさい。

 

出典:BlacktipH

僕は釣りは殆ど分からないんですけど、釣り好きならさらにこの本の魅力に取りつかれるはず。



生まれるのは、偶然
生きるのは、苦痛
死ぬのは、厄介

聖ベルナールの、そんな銘句が、ふと、よみがえる。何かの事情があって野外へ出られない人、海外へいけない人、鳥獣虫魚の話の好きな人、人間や議論に絶望した人、雨の日の釣師……すべて書斎にいるときの私に似た人たちのために。

献辞に記された言葉のように人生を「後悔」するのではなく、「航海」を続けていきたいと思います。

written by たみと