今日は虫の日 トキソプラズマ・toxoplasmaが人の脳を操る仕組み
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トキソプラズマ症を引き起こす
寄生虫トキソプラズマ(緑色)をとらえた
透過型電子顕微鏡(TEM)の着色写真。
Image from Moredun Scientific Ltd.
/Science Source
/Photo Researchers
2013.01.23
チェコの進化生物学者ヤロスラフ・フレグル(Jaroslav Flegr)氏は、
大胆な主張によってここ1年ほどメディアの注目を集めている。
トキソプラズマというありふれた寄生虫が、われわれの脳を
“コントロール”しているというのだ。
トキソプラズマは通常はネコに寄生する。
巧みな戦略をとることで知られ、ネコからネコへ感染するのに
ネズミを媒介とし、寄生したネズミの行動を変化させてネコに
食べられやすくすることで新たな宿主に乗り移る。
ネコに食べられやすくするため、トキソプラズマがネズミに
ネコに食べられやすくするため、トキソプラズマがネズミに
引き起こす行動の変化は、反応時間が遅くなる、無気力になる、
危険を恐れなくなるというものだが、このような変化は
トキソプラズマに寄生された人間にも現れることをフレグル氏は
発見した。
しかし、トキソプラズマがどのような方法でそうした変化を
もたらしているのか、最近までほとんど解明されていなかった。
2カ月前、スウェーデンの研究チームが謎を解く重要なカギを
2カ月前、スウェーデンの研究チームが謎を解く重要なカギを
発見した。
寄生した体内を移動し、さらには肝心の脳に到達するために、
トキソプラズマは白血球を“乗っ取る”。
白血球といえば、そもそもこのような侵入者を攻撃する細胞だ。
白血球を路線バス代わりに利用するだけでなく、トキソプラズマは
それらを小さな化学工場に変え、ネズミの、ひいては
人間の恐怖感や不安感を鈍らせる神経伝達物質を作らせている
という。
トキソプラズマは主にネコを宿主とするが、ゴミ箱、汚染された水、
トキソプラズマは主にネコを宿主とするが、ゴミ箱、汚染された水、
加熱の不十分な食肉などを介してヒトへも多く感染している。
ほとんどの場合、感染しても大きな問題とはならないが、妊娠中の
女性は注意が必要だ。
米国疾病予防管理センター(CDC)は、妊婦が感染した場合、
流産や先天異常のリスクが高まると注意を呼びかけている。
◆謎の解明
1990年、フレグル氏はひょんなことから自身がトキソプラズマに
◆謎の解明
1990年、フレグル氏はひょんなことから自身がトキソプラズマに
感染していることを知った。
同僚の研究者が新たな診断テストを開発し、それをフレグル氏に
試したのだ。
感染を知ったフレグル氏はあることをひらめいた。
トキソプラズマがネズミの恐怖感を低下させ、
ネコに食べられやすくすることを知っていた同氏は、自身もまた
少し前から恐怖心が鈍くなったことに気づいていた。
「道を渡っていて、車にクラクションを鳴らされたのに
飛びのかなかった」のだ。
そこでフレグル氏は考えた。
これはトキソプラズマが原因ではないだろうか?
それから15年間、公衆衛生データによる実験と分析を行った
それから15年間、公衆衛生データによる実験と分析を行った
結果、フレグル氏はトキソプラズマと人間の行動にいくつかの
驚くべき関連性があることを突き止めた。
トキソプラズマに感染した人は交通事故に遭う確率が2倍以上
高まるが、これはトキソプラズマが反応時間を遅くするためだと
フレグル氏は考えている。
さらに、感染者は統合失調症を発症しやすくなるという。
トキソプラズマ感染は自殺率の上昇に関連しているという
別の研究チームの報告もある。
トキソプラズマがこうした変化を生じさせるメカニズムは
トキソプラズマがこうした変化を生じさせるメカニズムは
謎だったが、2009年にイギリスの研究チームが、
トキソプラズマはドーパミンの前駆物質であるレボドパ(L-dopa)
を生成する2つの遺伝子を持つことを発見した。
ドーパミンの増加は統合失調症の発症と関連付けられている。
しかし、この発見だけではすべてを説明できず、依然として
多くの謎が残った。
◆免疫細胞を乗っ取る
スウェーデンのカロリンスカ研究所感染症学センターに
◆免疫細胞を乗っ取る
スウェーデンのカロリンスカ研究所感染症学センターに
所属する研究者、アントニオ・バラガン(Antonio Barragan)氏の
チームは、マウスの血液中のトキソプラズマを調べ、
彼らが意外な場所に生息していることを発見した。
彼らを殺すはずの免疫細胞の内部だ。
この細胞は白血球の一種で、樹木に似た形状から“樹状細胞”
と呼ばれる。
「樹状細胞は免疫系の門番だ」とバラガン氏は言う。
「われわれは、トキソプラズマがこれらの細胞を移動手段に
使っているのではないかと考えた」。
つまり、樹状細胞を“トロイの木馬”にしているのではないかと
いうのだ。
この読みは当たっていた。
この読みは当たっていた。
トキソプラズマはこの免疫細胞を使って体内を移動し、
宿主の脳に到達していた。
しかしどうやって? 免疫細胞は刺激を受けないと動かない。
かといって、トキソプラズマが動かしているわけでもない。
樹状細胞は自分が感染していることすら気づいていない様子だ。
それでは何が樹状細胞を動かしているのだろうか?
答えが見つかった。
答えが見つかった。
神経伝達物質のガンマ-アミノ酪酸(GABA)だ。
「不可解なことだった」とバラガン氏は言う。
「GABAは脳内で機能するものだ。
それが免疫系で何をやっているのか?」。
しかし現に、GABAはそこにいた。
バラガン氏はそれまで誰も見たことのないものを目にしていた。
どうやらトキソプラズマが樹状細胞の内部でGABAを産生させ、
同じ樹上細胞の外側にあるGABA受容体を刺激し、
それによって細胞に体内を移動させ、脳に到達していると
考えられた。
そしてここからが肝心な点だ。統合失調症など多くの精神障害では、
一般にGABAの機能の乱れが観察される。
そしてGABAの量が増えることは「恐怖感や不安感の低下に
関連付けられている」とバラガン氏は述べている。
それでも、今回の発見ですべての謎が説明できるわけではない
それでも、今回の発見ですべての謎が説明できるわけではない
とチェコのフレグル氏は指摘する。
「私は依然として最も重要な物質はドーパミンだと考えている。
しかし、このGABAのメカニズムは斬新で非常に興味深い」。
また、さして驚くにはあたらないが、トキソプラズマに関して
また、さして驚くにはあたらないが、トキソプラズマに関して
これまでにわかった事実から考えて、
「彼らは非常に、非常に賢い生物だ」とフレグル氏は述べている。
Photograph by Tony Rowell, Your Shot
Photograph by Tony Rowell, Your Shot
ナショナルジオグラフィック日本語公式サイト
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