硬さが変わる“可逆ダイヤモンド”
Photograph by Cary Sol Wolinsky,
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ダイヤモンドの硬さは、永遠に変わらないと
考えられてきた。
ところが最新の研究によると、ある種の特殊な
構造の炭素分子の場合、圧力の増減に応じて
ダイヤモンドのように硬くなったり、グラファイト
(黒鉛)のように軟らかくなったりするという。
天然ダイヤモンドは、地球の奥深くで生み
出される炭素同素体の一つだ。炭素同素体
には、比較的軟らかいグラファイト、非常に
安定的なバッキーボールやカーボンナノチューブ
といった「フラーレン(結合体)」など、さまざま
な種類が存在する。
今回分析された炭素分子構造は、ガラス状
の非晶質物質「アモルファスダイヤモンド」。
30年以上前から工場生産されており、化学や
電子工学などの分野で利用されている。
しかし、この物質を高圧下に置いたときに
どうなるかはわからなかった。
研究チームの一員でアメリカのワシントンD.C
.にあるカーネギー研究所の高圧物理学者、
毛河光(マオ・ホークワン)氏は次のように話す。
「グラファイトは常に軟らかく、ダイヤモンドは
常に硬い。
私たちは、高圧実験に必要な可逆的な性質
を持つ物質を探していたのだ」。
◆可逆ダイヤモンドの仕組み
ダイヤモンドの硬さの秘密は原子配列にある。
ダイヤモンドの中では、炭素原子が互いに
「立体的」に結合しており、がっしりとした
ピラミッド状の連続的な結晶構造を形成して
いる。
一方、グラファイトは軟らかく剥がれやすい。
炭素原子が「平面的」に結合し、互いに強く
結び付いていない原子のシートがサンドイッチ
状に重なっている構造だからだ。
毛氏の研究チームが対象とした非晶質の
球状同素体も、ほぼ全体にわたって平面的な
結合構造で形成されている。
しかし、2つのダイヤモンドの小片で挟み込み、
地殻の地下数百キロと同じレベルの圧力を
加えると、炭素の結合がダイヤモンドのような
立体構造に変化し、結晶性ダイヤモンドに匹敵
する硬度を発揮するようになった。
圧力を取り除くと、平面的な結合構造が復活し、
軟らかいガラス状の形態に戻った。
◆加圧速度の増加
毛氏は、「可逆ダイヤモンドは魅力的な物質で、
さまざまな用途に利用できると考えられる。
ただし、商業利用について語るのは時期尚早だ。
まだゆっくりと加圧する実験しか行っていない」と
述べる。
今後は、急速に加圧された場合の硬度変化に
ついて研究を進めていくという。
例えば、高速で飛んできた弾丸がぶつかる圧力
で、瞬間的に硬化する材料が開発できれば、
まったく新しい防弾チョッキに応用できる。
また、研究上の利用価値も高い。
現在の高圧物理学では2つのダイヤモンドの小片
で挟んで加圧する方法が採用されているが、
新物質を活用すれば、さまざまな方向から超高圧
を加える新しい実験が可能になる。「この物質に
より、高圧物理学の地平が広がるはずだ」。
今回の研究成果は、「Physical Review Letters」
誌に掲載の予定である。
Photograph by Cary Sol Wolinsky, National Geographic
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