ISS大気圏再突入はいつ、どのように
Photograph courtesy NASA
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ロシア連邦宇宙局のビタリー・ダビドフ
(Vitaly Davydov)副長官が、国際宇宙
ステーション(ISS)を2020年に太平洋に
沈めると口を滑らせ、メディアはちょっと
した騒ぎになった。
しかし、15カ国が参加する約1500億ドル
のISSプロジェクトに関する副長官の発言
は早まったものだったとNASAは話して
いる。
NASA、ロシア連邦宇宙局、ならびに
日本、欧州、カナダの各宇宙機関は、
ISSを少なくとも2020年まで運用すること
で正式に合意している。
だが、「話はこれで終わりではない」と
NASAの広報担当ジョシュア・バック氏
は言う。「各国は2028年までミッションを
延長することを議論している。
今のところ延長しない理由はない」。
とはいえ、いつかISSはミッションが終了
し、地球への再突入を命じられる。
軌道上に放棄すればいずれ自然に落下
するが、地球上の広い範囲に残骸を降らせ、
おそらく地上の人間も危険にさらされる
ことになる。
◆制御落下
物体が軌道上にとどまるには、地球の
上を一定の速度で移動している必要が
ある。
地上320キロの地球低軌道(LEO)にある
ISSの移動速度は時速約2万8200キロで
ある。
しかし、LEOは完全な真空ではないため、
大気の外縁にある分子の薄い膜との衝突
で軌道上の物体は減速する。
航空宇宙工学のエンジニアで再突入の
専門家であるエアロスペース社のウィリアム・
エイラー(William Ailor)氏は、
「何かを浮かべたままにしておくことはでき
ない。押し上げてやる必要がある」と話す。
ISSは重量が約42トン、広さはサッカーの
コートと同じくらいある。軌道における大気
の抗力の影響を打ち消すために、ISSの
モジュールまたはドッキングした宇宙船の
推進剤を燃焼させて、定期的に高度を上げ
てやらなければならない。
推進剤の燃焼をやめれば、ISSはいずれ
軌道から落下する。とはいえ、推進剤が
無くなるに任せるというのは現実的ではない。
ISSは大気圏への再突入で完全に燃え尽き
はしないので、計画的に落下させないと残骸
の塊が地上に落ちる時刻も場所も分から
ない。
◆“宇宙船の墓場”
地上の安全を確保するには、適切な時に
推進剤の強力な燃焼で減速させて軌道から
外すのがいちばんだ。I
SS以前に宇宙最大の人工物だった宇宙
ステーション「ミール」を、ロシア連邦宇宙局
はこの方法で処分している。
2001年3月、軌道を周回していた145トンの
ミールを減速し、文明世界から遠い南太平洋
の「宇宙船の墓場」に落下させた。
◆ISSの再突入
ミールよりはるかに大きなISSでも、同じ
ように教科書的な再突入が行われるはずだ。
2010年10月のNASAの発表によると、ISSの
前端に無人宇宙船をドッキングし、適切な
タイミングで推進剤を全力で燃焼させて、I
SSを丸ごと大気圏に沈めるという。
すると、温度が上がり始める。
ISSが薄い外圏大気を極超音速で通過する際、
錐体に似た衝撃波の前面が前方の部品を
包み込む。空気の分子は圧縮されて衝突し、
赤外線を放射し、ISSは1600度以上に熱せ
られる。
「軌道上の運動エネルギーをすべて熱に
変えて減速していくわけだ」とエイラー氏は
言う。
「最初(に崩壊するの)は、ソーラーパネル
のような薄くて壊れやすいものだ」。
より大きなモジュールは高温になり、突入
のなかで軟らかくなったり溶けたりし始める。
融点がいちばん低いアルミニウムが最初に
溶け、鉄やチタンがこれに続く。
次に金属の結合部分が外れる。こうして
弱った構造物は、より厚い大気に沈んで
ゆく中で、最大で重力の約8倍の力によって
減速され、部品をずたずたに引きちぎられる。
「高度約37キロまでには、ほとんどすべてが
バラバラになっている。
生き残った破片は、今度は冷やされながら
減速していく」とエイラー氏は説明する。
「18~24キロの地点で、破片の大半は音速
以下のスピードになり、以降は真っすぐ、
つまり窓から落としたピアノのように落下して
いく」。
無人補給機ヨハネス・ケプラーなど大きな
宇宙船を再突入させたこれまでの例に基づくと
、ISSの10~40%が地球に到達するはずだ。
◆ISSの今後
ISSを安全に解体する計画はもともと、
宇宙ゴミが衝突して宇宙飛行士の安全を
保てなくなるといった予期しない緊急事態
への対処として開発された。
そうしたことがなければ、ISSは最近ようやく
完成したばかりであり、耐用年数はまだ
たっぷりある。
ISSがいつ廃棄されるかという話は、
やはりまだ時期尚早だろう。
Photograph courtesy NASA

