3月11日に発生した東北地方太平洋
沖地震の振動は、大気圏外まで到達
しかねない強さだったということが、
最新の研究で明らかになった。
揺れる大地の上下動と押し寄せる
津波によって生じた振動は、上空に
横たわる大気を上へと押し上げていたと、
アメリカ、イリノイ州にある
ノースウェスタン大学の地球物理学教授
エミール・オカル氏は言う。
オカル氏は今回の研究チームには参加
していない。
このような影響はこれまでの地震でも
確認されていたが、今回の日本の地震
で生じた振動は観測史上最大の規模
だった。
この振動は低周波数の音波に似ており、
地上ではごく小さく、せいぜいその振動
の元となった上下動と同じくらいの規模
でしかない。ところがこの振動が大気の
薄い上空へ伝わっていくと、その波は
大きくなるとオカル氏は話す。
今回の地震から生じた波動が飛行機
の巡航高度(9100メートルくらい)まで
到達したときには、振幅が1メートル程度
まで拡大していた可能性があるとオカル氏
は言う。
振動は通常の均衡状態から
この程度までは増幅するもので、この程度
では航空機の乗客は揺れを感じること
すらない。
だがさらに上空の電離層では、この波動
は元の規模の数千倍まで増幅されていたと、
台湾国立中央大学宇宙科学研究所の
劉正彦(Liu Jann-Yenq)教授らの研究
チームは言う。
◆地震の波動を利用して津波を監視できる?
電離層は比較的高温のガスでできている。
高度が高いため、強烈な太陽光の影響を
受けて、ガスは電荷を帯びている。
上へと伝わってきた地震の波動がこの
ガスを圧縮し、その影響はGPSに使われる
電波などにも現れるほどだった。
「もし、きわめて正確なGPS装置を持って
いれば、(信号の乱れを)確認できる」と
オカル氏は言う。
こうしたGPS信号の乱れを利用して、
津波が外洋にあるうちから追跡しようと
提唱している研究者もいる、とオカル氏は
言い添える。
だがオカル氏は、それが警告システム
として実用性を持つとは考えにくいとして
いる。信号の変化を確認できるほど正確
なGPS受信機は陸上にしかないので、
信号の乱れを捉えられた時には、津波
はもう海岸に到達している、というのが
その理由だ。
オカル氏によると、電波が電離層で反射
するのを利用して水平線以遠を観測する
OTHレーダー(over-the-horizon radar)にも
同様の影響が現れ、こちらのほうが利用
できる見込みが高い。
「津波の警告システムを改善できる可能性
があるとして、これに取り組んでいる研究者
もいる」とオカル氏は言う。
今回の研究は
「Journal of Geophysical Research」誌
6月28日号に掲載された。
Diagram courtesy NOAA
ナショナルジオグラフィック日本語公式サイト

