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◆冷却の失敗
日本の電力供給の3割は、1966年以降に建設された
54基の原子力発電所に依存している。
3月11日の地震と津波の発生以後は、約11基の原発
が停止している。
業界筋によると、福島第一原発も含めてすべて設計通り
に作動し、核分裂反応が自動的に停止したという。
第一原発事故は、核燃料が発する崩壊熱処理の不手
際が原因との指摘もある。燃料は、核反応の停止後も
持続的に冷却しなければならない。
核燃料を冷却するには、モーターとポンプから成る冷却
システムに電力を安定供給する必要がある。
通常は、地震発生後に停電しても機能を維持できるよう、
原発にはバッテリー・システムと非常用ディーゼル発電機
が備え付けられている。
しかし第一原発の場合は、地震と津波の発生後すぐに発電
機が停止し、バッテリーもわずか数時間しか保たなかった。
代替システムが現場に急送されたが、冷却用真水の調達
にも障害が生じていた。
そこで東京電力はホウ酸を添加した海水の注入に踏み切
った。
ホウ酸には核分裂反応を抑制する効果があるが、前例の
ない措置だという。
非営利の米電力中央研究所(EPRI)で原子力担当副所長
を務めるニール・ウィルムシャースト氏は、「福島原発の設計
と想定していた地震リスクについては、これから確認して精査
しなければならない」との認識を示した。
◆地震リスクの想定
2007年の新潟県中越沖地震の際には、EPRIの専門家を
始め多くの科学者や技術者が柏崎刈羽原子力発電所を訪れ
影響を調査した。
当時は、マグニチュード6.8の地震発生後に変圧器火災が
発生。消火システムの一部に支障を来し、配管や排気ダクト
も損傷を受けたという。
このとき、設計段階の想定をはるかに超える地震が起きた
ことから、原子力発電所の地震リスクを調査する機運が世界
的に高まった。
国際原子力機関(IAEA)も現地調査に乗り出し、調査結果を
発表して意見交換する場を設けている。
IAEAの報告書には、「新しい核施設の地震リスクは、古い
施設と比べて大幅に高く設定されている」との記述があった。
1980年代半ばに運転を開始した柏崎刈羽原発に対し、1970
年代初頭の福島第一原発は10年以上も古い核施設である。
2007年の地震発生以来、東京電力は耐震補強の取り組み
と完全性の試験を続けており、柏崎刈羽原発の7基中3基の
原子炉はいまだ運転再開に至っていない。
実は、この3月中に次の運転再開が予定されていたという。
専門家によると、2007年の事故には明るいニュースもあった。
「システムの損傷が最小限に抑えられ、原子炉も安全に保た
れていた。リスクを高めに設定し、安全を最優先して原子炉が
設計されていた証拠だ」とEPRIのウィルムシャースト氏は指摘
する。
福島第一原発でも同じレベルの安全性が期待されるが、実際
はどうなのだろう。ウィルムシャースト氏の見立てでは、放射能
の測定値から判断して、ジルコニウムなどの金属から成る
「燃料被覆管」には亀裂が入っている可能性が高い。
しかし鋼鉄製の「原子炉圧力容器」とその関連システム、および
鉄筋コンクリート製の「原子炉格納容器」にダメージは無いようだ。
最外部の「原子炉建屋」は水素爆発で天井が吹き飛んでいる。
肝心のウラン燃料は、融点を上げるために焼き固められた
「燃料ペレット」に加工され被覆管内部に詰められている。
以上「5重の壁」が放射能漏れを阻むはずだった。
ウィルムシャースト氏は最後に、次のようにコメントした。
「未曾有の危機と言っていい。日本に限らず世界が注目しており、
一日も早い事態の収束を願っている」。
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